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〈レポート〉大阪音楽大学 第66回定期演奏会


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レポート

2023年12月2日(土)、ザ・シンフォニーホールで「大阪音楽大学 第66回定期演奏会」が開催されました。指揮は、国内外で数多くオーケストラの音楽監督を歴任してきた井上道義氏。本学の定期演奏会にお迎えするのは3年ぶりです。2024年をもって指揮活動の引退を発表している井上氏が指揮するのは、鮮烈な印象を放つ近代音楽のプログラム。その熱意に、現役学生をはじめとする大阪音楽大学管弦楽団が力演で応えました。

ー P r o g r a m ー

芥川 也寸志/交響管弦楽のための音楽

A.アルチュニアン/トランペット協奏曲 変イ長調(トランペット:菊本和昭)

I.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」


幕開けは芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」。耳なじみの良い旋律が、軽妙なリズムに乗って展開される2楽章構成の作品です。序盤から華のある音で、かつ清らかにメロディーを紡いでいくオーケストラ。中間部ではイングリッシュ・ホルンが叙情的な響きを印象づけ、呼応して各パートが奥行きを増していきます。

井上道義氏

第2楽章はシンバルの一撃を機に、トランペットやピッコロ、トロンボーン等が次々にエネルギッシュな演奏を展開。マエストロもステップを踏み、全休止の瞬間にはターンも交えてオケを盛り上げます。客席も体を揺らしながら芥川の世界に浸りました。フィナーレは奏者がそろって立ち上がるサプライズ! 1曲目から割れんばかりの拍手が送られました。

続くアルチュニアンの「トランペット協奏曲 変イ長調」は、本学の客員教授であり、NHK交響楽団首席トランペット奏者の菊本和昭さんを迎えて。チェロとコントラバスが刻むトレモロにのせ、トランペットの独奏が高らかに始まります。作曲者の故郷アルメニアの民俗的な旋律が、菊本氏のふくよかな音色で彩られました。オケはさっそうと指揮をとる井上氏と息を合わせ、ハープが彩りを加え、クラリネットが展開をリードして疾走していきます。

菊本和昭氏

菊本氏のスキルフルな独奏、力強い弦のユニゾンなど聴きどころが続き、中盤は哀愁に満ちた主題へ――。トランペットは弱音器を付け、弦の繊細な演奏、とりわけ低弦の美しい和声に促されて、静かに聴衆に語りかけました。ハイライトは朗々と吹奏されるトランペットのカデンツァ。伸びやかな音を会場に響かせ、ラストはオケのユニゾンを伴ってドラマチックに終結しました。

そして、ストラヴィンスキーの革命的作品、「春の祭典」。2セットのティンパニ、バストランペット、バス・クラリネット、コントラ・ファゴットなどを擁する分厚い編成で、大迫力の演奏に挑みました。

ファゴットによるリトアニア民謡的な旋律を皮切りに、複雑極まりないリズム、不意を突くアクセントなどで、多調の世界が彩られる本作品。マエストロは、オケに怒涛のような音を要求するかのごとく腕を振ります。ティンパニをはじめ、管・打のサウンドは特に刺激的で、大地を揺らすようなパワー、目に見えないものがうごめく様を伝えます。

大音量による激烈な展開から不気味な静けさまで、クライマックスに向けてその迫力は失われず。大太鼓のソロが最後の静寂を打ち破り、圧巻のフィナーレ。緊張感から解かれた観客からは、称賛がやみませんでした。

学生たちのみなぎるエネルギーが、マエストロの情熱とぶつかり合った類いないステージ。ホールを埋め尽くした人々にとって、記憶に残る一夜になりました。

Text / 沖知美(高速オフセット)Photo / 飯島写真事務所