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夢と現実のあわいに響く─ハイドン『月の世界』で体験する新しい舞台芸術


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ニュース

ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団第67回定期演奏会「Concert’Opera~音楽とお芝居、映像の新しいかたちのコンサート・オペラ~」が11月9日(日)、ザ・カレッジ・オペラハウスで開かれます。J.ハイドン作曲の歌劇『月の世界』(全3幕・原語上演・字幕付)の関西初演。「空想と現実が響き合う、新しいオペラ体験」になるという演出の井原広樹先生(特任教授)に企画の意図、聴きどころなどを伺いました。

音楽・芝居・映像が織りなす舞台

――「音楽とお芝居、映像の新しいかたち」というコンセプトに込められた意図は?

ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団のConcert’Operaシリーズは、オペラという総合芸術を「現代にどう響かせるか」という問いから始まりました。今回も音楽を軸に据えながら、芝居と映像を加えることで、物語世界をより多層的に体験できる舞台を目指しています。映像は単なる装飾ではなく、まるでもうひとりの登場人物のように物語に作用し、観客を幻想と現実のあわいへと誘います。

――従来のオペラと一線を画す点はどこにありますか?

従来のオペラでは舞台美術と演者の演技によって物語が展開しますが、今回は「映像」という第三の要素を組み込みました。これにより、空間は流動的に変化し、音楽と演技に新たな彩りが加わります。ハイドンが描いた《月の世界》の奇想天外さと、人間の愚かさや愛らしさを、より鮮やかに引き出せると考えています。

――〈関西初演〉作品を多く取り上げるのは、なぜでしょうか?

ハイドンのオペラは名曲揃いでありながら、上演の機会が非常に少ない。関西で紹介することには文化的な意義がありますし、観客に「新しい発見」を届けられるのが何よりの魅力です。モーツァルトやロッシーニを理解するためにも、ハイドンの舞台作品に光を当てることは重要だと考えています。

幻想と現実が交差する仕掛け

――一番の見どころを教えてください。

月世界の幻想と人間模様のリアルさが交錯する瞬間です。舞台と映像、そしてハイドンの音楽が溶け合う、その境界線をぜひ目撃していただきたい。

――演出において特にこだわっている部分、あるいは挑戦する部分はどこでしょうか?

「空想を借りて現実を照らす」というこの作品の本質を、どう視覚化するかに力を注ぎました。月面旅行という突飛な設定を、観客に「荒唐無稽だがどこか身近」と感じていただけるよう、演出面では幻想と現実を交差させる仕掛けを多く取り入れています。

――映像表現を取り入れることで、演技や舞台美術にどのような変化がありましたか?

映像を導入することで、場面転換はよりスピーディに、また空間は伸縮自在に広がりました。演者にとっても、映像との関係性を意識することで演技が立体的になり、観客にとっては「舞台全体が生き物のように動く」体験になると思います。

――音楽・お芝居・映像のバランスをどうやって取られていますか?

音楽を常に中心に据えることを第一としています。その上で、芝居と映像は音楽のリズムや感情に寄り添い、決して出しゃばらず、むしろ支える存在として設計しています。三者が互いに引き立て合い、ハイドンの精緻な音楽を際立たせることを狙っています。

――演者たちの表現力をどのように引き出したいと考えますか?

演者一人ひとりの個性を尊重し、役柄を通してその個性が自然ににじみ出ることを大切にしています。歌と芝居を分けて考えるのではなく、舞台で「一人の人間として生きる」感覚をつかんでもらうことで、観客の心に届く表現が生まれると信じています。

オペラの新地平

――作品を通じて、観客にどんな体験や感動を届けたいですか?

登場人物は皆どこか愚かで、しかしどこか愛おしい。観客は彼らを笑いながら、同時に人間の本質に触れる瞬間を体験するでしょう。夢と現実、滑稽さと愛情のあわいにある「人間らしさ」を味わっていただければと思います。

――初めてオペラを観る方にも楽しめる作品になっていますか?

はい。軽妙な音楽、ユーモラスな物語、そして映像の工夫によって、オペラに馴染みのない方にも気軽に楽しんでいただけます。まさにオペラ入門として最適な一作です。

――今後どのような舞台表現の可能性を見出していますか?

ハイドンのオペラを上演すること自体が大きな挑戦ですが、音楽・芝居・映像の融合はオペラ表現にまだまだ新しい地平があることを教えてくれます。伝統を踏まえつつ、現代の観客に「生きたエンターテイメント」として届けられる道を、これからも切り拓いていきたいです。

――最後に、観に来てくださる方々にメッセージをお願いします。
笑いと驚き、そして温かな人間味に満ちた《月の世界》。どうぞ肩の力を抜いて、夢とユーモアの世界に遊びにいらしてください。

「月の世界」公演チラシ

公演のお知らせ

ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 第67回定期演奏会
Concert’Opera~音楽とお芝居、映像の新しいかたちのコンサート・オペラ~
J.ハイドン作曲 歌劇『月の世界』全3幕 原語上演・字幕付《関西初演》


日時:2025年11月9日(日)14時00分 開演(13時15分 開場)
会場:ザ・カレッジ・オペラハウス
指揮:粟辻 聡
演出:井原 広樹
配役:ブォナフェーデ(桝 貴志)/エックリーティコ(清原 邦仁)/リゼッタ(村岡 瞳)/フラミーニア(野口 真瑚)/クラリーチェ(梨谷 桃子)/エルネスト(大賀 真理子)/チェッコ(谷口 耕平)
合唱:大阪音楽大学声楽専攻生
料金:全指定席 4,500円(税込)、高校生以下無料

※ 10/27(月)~11/7(金)正午までは電話予約のみ
※ 大阪音楽大学オンラインストア以外でのご購入は、チケット1枚につき300円の手数料をご負担いただきます。
※ 未就学児のご入場はお断りいたしております。

井原 広樹(IHARA Hiroki)
プロフィールはこちら