〈レビュー〉大阪音楽大学 第56回吹奏楽演奏会
ー P r o g r a m ー
R.ヴォーン・ウィリアムズ/トッカータ・マルツィアーレ
G.ホルスト(伊藤康英校訂版)/吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調
P.A.グレインジャー(F.フェネル校訂版)/リンカンシャーの花束
M.エレビー/ノーフォーク狂詩曲
P.スパーク/交響曲 第3番「カラー・シンフォニー」
R.ヴォーン・ウィリアムズ/トッカータ・マルツィアーレ
G.ホルスト(伊藤康英校訂版)/吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調
P.A.グレインジャー(F.フェネル校訂版)/リンカンシャーの花束
M.エレビー/ノーフォーク狂詩曲
P.スパーク/交響曲 第3番「カラー・シンフォニー」
プログラム最初に配されたヴォーン・ウイリアムズの《トッカータ・マルツィアーレ》から、ボストックが示した音楽創りは明確にあらわれていて、奏者同士の自主的なアンサンブルを重視したものだった。総体的な響きの凝縮を求めたいところもあったが、ともすれば全てが指揮者の放つ色に染まってしまいがちなところを、敢えて自然発生的に生まれる音楽を大事にしていたのだ。
続くホルストの《吹奏楽のための第1組曲》でもそれは同じ。特に第3曲「マーチ」での軽やかな表現は、にぎやかにポリフォニックな音楽を生み出した。この作品の持つ心地よさを発揮した演奏だった。従来から楽譜の問題が多かった作品であるが、近年使われることの多い伊藤康英による校訂版が使われた。
グレインジャーの《リンカンシャーの花束》は作曲者ほかが採集したイングランド民謡をもとに編まれた作品だ。まさに豊かなメロディが束になって届けられた。第3曲「ラフォード公園の密猟者」は、その題名どおりにミステリアスに。第4曲「元気な若い水夫」はのどかに牧歌的な響き、第5曲「メルボルン卿」はあたたかなハーモニーが連なった。あちこちで登場するバグパイプを思わせる音色が、それぞれの楽器で豊かに表現された。長年にわたり一般的に使われているフェネルの校訂版が使われた。
ダグラス・ボストック氏
休憩後は1957年生まれであるマーティン・エレビーの《ノーフォーク狂詩曲》から。この日並んだ曲目の中ではもっとも取り上げられる機会が少ないであろう作品だ。曲中で木管楽器がリコーダーに持ち替えて演奏する部分があり、これがとても効果的だった。中間色でグラデーションのある音色が響きのコントラストを形成し、そのことが音楽に意外性をもたらしていた。
最後はスパークの《交響曲 第3番「カラー・シンフォニー」》。5つの楽章に順に白、黄、青、赤、緑と色の名前がついている。第1楽章は薄いオーケストレーションの中から色彩が重なって、息の長いメロディが高まる。ホルンが奏でたメロディが美しかった。第2楽章はスケルツォ的な音楽。この音楽用語を日本語に直した諧謔というよりも、ストレートにユーモアという言葉が当てはまる。第3楽章を聴きながら「夜の音楽」という言葉が浮かんだ。ゆっくりとしたテンポを持つ緩徐楽章だが、うつろう色合いが美しい。それぞれの楽器ごとに極めて繊細に印象的な場面がつくられる。第4楽章はスケールの大きなフィナーレ。冒頭からティンパニの明確な歩みがアンサンブルを引き締めた。最後は華やかに幕が下り、ブラボー!
アンコールにグレインジャーの《デリー地方のアイルランド民謡》とスパークの《4つのノーフォーク舞曲より 第4楽章》というイギリス尽くしで、このヨーロッパの島国が持つ独自の文化の奥深さを感じることができた一夜になった。
Text / 小味渕彦之(音楽評論家)Photo / 飯島隆
Ⓒ樋川智昭
小味渕彦之(Hiroyuki Komibuchi)
1971年大阪生まれ。関西学院大学、および同大学院で音楽学を学ぶ。関西地方を中心に演奏会のために曲目解説を執筆するほか、「サマーミュージックフェスティバル大阪」、武満徹の合唱作品を中心とする演奏会など、コンサートのプロデュースも手がけている。「朝日新聞(大阪本社版)」などで演奏会の音楽評を担当。また、ステージマネージャーとして数多くの演奏会に携わってきた。1999年から2023年まで、住友生命いずみホールのステージマネージャーを務めた。2023年から豊中市立文化芸術センター総合館長。 関西学院大学、大阪芸術大学、武庫川女子大学非常勤講師、同志社女子大学嘱託講師。
1971年大阪生まれ。関西学院大学、および同大学院で音楽学を学ぶ。関西地方を中心に演奏会のために曲目解説を執筆するほか、「サマーミュージックフェスティバル大阪」、武満徹の合唱作品を中心とする演奏会など、コンサートのプロデュースも手がけている。「朝日新聞(大阪本社版)」などで演奏会の音楽評を担当。また、ステージマネージャーとして数多くの演奏会に携わってきた。1999年から2023年まで、住友生命いずみホールのステージマネージャーを務めた。2023年から豊中市立文化芸術センター総合館長。 関西学院大学、大阪芸術大学、武庫川女子大学非常勤講師、同志社女子大学嘱託講師。
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