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ありそうで無かった!「美大」×「音大」の学生間コラボで短編映画を制作


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ニュース

映像のプロを目指す武蔵野美術大学の学生と、音楽のプロを目指す大阪音楽大学の学生が集い、短編映画を一緒に制作する──ありそうで無かった、初めてのコラボが実現しました。

先日、完成した短編映画3本の上映会が行われ、両大学の学生達が初めてリアルに集まりました。本記事ではその様子をレポートします!

武蔵野美術大学・大阪音楽大学コラボ 短編映画上映会

開催:2023年7月26日(水)
会場:大阪・十三 シアターセブン
司会進行:渡邊 崇(大阪音楽大学特任教授)

> 上映作品1「枯れた髪が靡いて」
> 上映作品2「啼声の羽化」
> 上映作品3「お化粧マジック」

大学間コラボに至った経緯

「映画音楽の作曲において、実戦的な現場での制作経験は、机上では学べないことが数多くあります」。そう話す渡邊崇先生は、かねてから他大学とのコラボレーションを視野に入れた展開を温めてこられました。

今回のコラボレーションは、武蔵野美術大学の岡太地先生と本学の侘美秀俊先生がお知り合いで、そのご縁からお話をいただき、実現したものです。

武蔵野美術大学とは昨年度、卒業制作で作られた映像作品に、ミュージッククリエーション専攻(以下、Cr専攻)卒業生の堀本陸さん、Shin Eunwooさん、大音ラボの中原実優さんが音楽を付けるという、試験的なコラボが実施されました。

今回は、武蔵野美術大学映像学科2年生の「デジタルドラマⅠ」の授業で制作される作品のプロジェクトに、本学のCr専攻生が音楽で参加することで、在学生同士のリアルタイムなコラボレーションが実現しました。

作家学生のマッチングと制作までの流れ

まず、武蔵野美術大学で制作される作品のうち、本学Cr専攻のどの学生がどのプロジェクトに参加するかといった取り決めを行う必要がありました。

参加予定の本学学生達が武蔵野美術大学から頂いた作品の台本を読み込み、自身の作風などと共に検討しました。さらに、本学学生達のプロフィールを武蔵野美術大学に送付し、監督の学生達にも検討してもらうといった方法で、学生とプロジェクトとのマッチング作業が行われました。

そして今年5月に教員の立ち会いのもと、オンライン会議で各プロジェクトの顔合わせが行われ、コラボプロジェクトがキックオフ。その後はプロジェクトごとにチャットグループを作り、全てオンラインで制作が進められました。

そして完成したのが、初コラボの短編映画。以下の3作品です。

上映作品1「枯れた髪が靡いて」

友達の女の子に、ドレスを作ってあげる男の子。
器用にミシンを動かして、少しずつ出来ていくドレス。
「卒業式に間に合う?」
でも、ドレスは間に合いませんでした。そして……。

「静寂を大切にする音楽を」
音楽担当:木村はづきさん(Cr専攻4年)インタビュー

木村はづきさん(Cr専攻4年)

── 最初に台本を見た時に湧いた音楽のイメージはどんな物でしたか?

木村さん:ミシンの音や月の明かりといった、静かなイメージでした。監督も、ミシンの音など環境音を大切にしているとおっしゃっていたので、音楽で壊したくないと思いました。


── 制作を進める中で、イメージの変化などはありましたか?

木村さん:最初はチェロで、低い音域で演奏していたんですが、監督から少し雰囲気が重いので、バイオリンに変えることは可能ですか?という相談を受けました。指示が具体的だったので、とても進めやすかったです。


── 楽曲を作る上で意識した点はありますか?

木村さん:監督はミシンの音や静寂も大切にしたいとおっしゃっていたので、その意向を楽曲に反映したところです。あと、エンディングテーマは幻想的で、浮遊感があるようなものにできたかなと思います。


── 作品を完成させた今、どう感じていますか?

木村さん:衣装がキラキラしている所が凄く好きで、細かい所にこだわっている作品だなと思いました。映画作りに最初から参加できたことは、本当に良い経験になったと思います。

「自分が携わった映画を映画館で見ることが夢でした」
美術・衣装・ヘアメイク・宣伝:黒米穂美果さん インタビュー

黒米穂美果さん

── 作品作りはいかがでしたか?

黒米さん:自分が携わった映画を映画館で見るということが夢だったので、この授業は本当に充実していたのですが、とにかく大変でした。スタッフが少ないので一人一人の負担が大きく、学校に遅くまで残ることもありました。


── 音楽が付いて、制作に変化はありましたか?

黒米さん:淡々とした作品になりそうな感じだったのですが、音楽が付くと、ドラマチックな作品に変化しました。特に終盤の盛り上がりは、音楽の力を感じます。


── 今回のコラボは如何でしたか?

黒米さん:凄く良い経験をさせてもらいました。木村さんともまたご一緒したいです。作品については反省点がいっぱいありますが、今回は音楽に助けてもらったと思っています。次の世代にも、このコラボは是非とも経験してほしいと思いました!

上映作品2「啼声の羽化」

自分の声にコンプレックスを持つ、引きこもりがちな男の子。
害獣退治業者の男性が、男の子の心を少し開ける……。

「最初から最後まで監督を信頼していました」
音楽担当:水野璃奈さん(Cr専攻3年)インタビュー

水野璃奈さん(Cr専攻3年)

── 実験的な印象の作品でしたが、最初に台本を見てどのような印象を受けましたか?

水野さん:台本を見たときから、これは面白い作品だと感じました。当初はロックのような音楽が合うのかなと思っていましたが、監督とディスカッションをする中で、「自分の声が好きじゃない主人公は、心を落ち着かせるためにヒーリングミュージックを聴いている。弱さのある子なんだ」という設定を聞き、当初のイメージとは全く違うものになりました。


── イメージが大きく変わる中で、どのようにして新しい音を考えましたか?

水野さん:監督さんから参考曲を5曲ほど聴かせてもらいました。制作した楽曲についても具体的な修正指示をいただいていましたので、方向性に迷うことは無かったですね。


── 出来上がった作品を見てどのように感じましたか?

水野さん:完成の途中まで見せてもらっていたのですが、最終的に完成された作品を見るとガラッと変わっていて(笑)。一体何を思ってこんなに変えたのか、そこにどんな思いや工夫が散りばめられているのか、直接監督に聞きたいと思いました。


── 作業を通じて、いかがでしたか?

水野さん:最初から最後まで、監督を信頼して進めることができたと思います。とても良い経験をさせてもらいました。

「生みの苦しみ以上の感情をみんなで共有するために」
監督・脚本:深野真洋さん インタビュー

深野真洋さん

── 今回、コラボ作業をしてみていかがでしたか?

深野さん:映像を専門に学んでいる私は、音楽のことは分かりません。でも、音楽を専門に学んでいる方と一緒に作業して音楽を付けてもらうと、作品の印象は大きく変わりました。今後もこういった、作品を通じた出会いを大切にしていきたいなと思います。


── 映画を作る作業は大変ですか?

深野さん:そりゃ…もちろん(笑)。表現することにはたくさんのストレスを伴いますが、それ以上の感情をみんなで共有する、その瞬間のためにみんなで一生懸命やってきました。今回はそれを感じることができました。


── 手応えもバッチリのようですね。このコラボレーションは次の世代もやった方が良いと思いますか?

深野さん:それは是非!絶対やった方がいいと思います!

上映作品3「お化粧マジック」

誰もいない部屋でひとり、化粧をする秘め事を持った男の子。
でも、たった一人の友達だけが、分かってくれている。
そんな友達に誘われて、ある作戦に出るが……。

「台本を読んで光や色が見えてきました」
音楽担当:髙田かなでさん(Cr専攻3年)インタビュー

髙田かなでさん(Cr専攻3年)

── 台本をもらった時、どのような印象を受けましたか?

髙田さん:まだ映像を見る前の段階ですが、光の加減とか色味のようなものが見えて、自分なりに解釈してみました。ロマン派の室内楽のような少しクラシカルな楽曲が合うのではないか、と考えました。


── 監督とディスカッションする中でイメージは変化しましたか?

髙田さん:いえ、当初のイメージに相違は無かったのですが、実際に作り始めると、私が思っていたものと監督さんが思っていたものでは細部のニュアンスが違っていたりして、話し合いながら詰めていったという感じです。


── 完成された作品を見てどう感じましたか?

髙田さん:映像に自分の音楽が付くということに憧れていたので、とても嬉しかったです。何度か見る中で、このシーンにはこの音楽が合うんだなということも分かってきて、自分の中でも大切な経験になりました。

「かなり細かい要望でもすぐに汲み取ってもらえました」
監督・脚本:井上優衣さん インタビュー

井上優衣さん

── 今回のコラボはいかがでしたか?

井上さん:私には音楽の知識が全然無くて、最初の会議で「アコギって何ですか?」と聞いちゃったくらいで(笑)。音楽を学んでいる方と交流するのはとても有り難かったです。武蔵美にはそういう機会は無いですので。


── 高田さんとの作業は上手く行きましたか?

井上さん:私はかなり細かい要望を出すタイプなのですが、すぐに汲み取っていただき、かなり早く形にしてもらえました。とても感謝しています。


── このコラボレーションは次の世代にもお勧めしたいですか?

井上さん:お勧めしたいです。やった方が良いですね!

創造の可能性が大きく拡がった時代

大阪音楽大学と武蔵野美術大学はそれぞれ大阪と東京の大学なので、コラボをするには距離を超えなければなりません。今回のコラボではオンライン会議やチャットツールを駆使し、全てデジタルデータでやりとりをすることで、プロジェクトが遂行されました。

深野監督が「作品を通じた出会いを大切にしたい」と話していますが、このコラボはまさにそんな出会いそのものでしょう。様々な才能が日本中、いや世界中に点在していても、出会いさえあればコラボができる時代、創造の可能性は大きく拡がっています。

答えのないアウトプット。相手の頭の中にあるイメージ図。突然思い浮かぶアイデア。そういった「生の創造の現場」に触れる経験は、大きな刺激になったに違いありません。
Interview&Text/BUBBLE-B