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大音生ドレス図鑑【前編】


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金の卵

演奏会や試験で身につける、ドレスやスーツ。
舞台では華やかに見える本番衣装ですが、その一着には、演奏する人それぞれの理由があります。演奏しやすいこと。曲や役の世界観に合っていること。舞台上できれいに見えること。そして、身につけたときに自分らしくステージに立てること。

さらに、専攻や楽器によっても、衣装選びで大切にするポイントは少しずつ変わります。腕の動きや座ったときの見え方、楽器を構えたときの肩まわり、呼吸のしやすさ、舞台上での動きやすさなど、演奏する身体と衣装は思っている以上に深くつながっています。アクセサリーや靴、ヘアメイク、香り、小道具、本番の日の持ち物にも、その人ならではの工夫があります。

「大音生ドレス図鑑」では、大阪音楽大学で学ぶ9人の本番衣装を紹介します。
どんな一着を選び、どんなところにこだわっているのか。9人それぞれのステージスタイルを、図鑑をめくるようにのぞいてみてください。
※本記事は、学生9名へのアンケート回答をもとに構成しています。

前編|PIANO
ピアニストの衣装、どこを見る?

前編に登場するのは、ピアノを学ぶ3人。同じピアノに向かっていても、衣装との付き合い方はそれぞれです。自分の気持ちが上がる一着を選ぶ人。曲の世界観を大切にする人。できるだけシンプルにして、演奏そのものを主役にする人。

一方で、腕を自由に動かせるか、座ったときにどう見えるか、ペダルを踏むときに裾が邪魔にならないかなど、3人に共通する「ピアノならでは」の視点も見えてきました。それぞれの違いと共通点を見比べてみましょう。

DRESS FILE 01:
江田夏音さん
大4・ピアノ演奏家特別コース

💭この一着!
「可愛い!」と「弾きやすい!」をどちらも

江田さんが紹介してくれたのは、2時間の演奏会に向けて新調したドレスです。胸元から上にはスパンコールが全面に施され、スカート部分にも細かなビーズ刺繍が散りばめられています。ライトを浴びるたびにきらきらと輝き、360度どこから見ても華やかに見えるところがお気に入り。肩まわりがしっかりしていて、自分で着替えやすいのも決め手のひとつ。本番中に衣装を気にせず演奏に集中できることも大切にしています。

💭選ぶポイント
「今日の私はかわいい!」が自信になる

江田さんが一番大事にしているのは、着たときの自分の気持ち。お気に入りの一着を身にまとい、「今日の私はかわいい!」と思えることが、その日の自信につながるといいます。ドレスを選ぶときは必ず試着。写真で見た印象と実物では、デザインの見え方や着心地が違うこともあるため、実際に袖を通して、自分が心から「これが好き!」と思える一着を選んでいます。

💭ピアノならでは
座った姿と「着丈」まで確認

ピアノを弾くときに大切にしているのは、腕の可動域です。肩紐や袖のあるドレスは、実際に腕を動かして、演奏の動きを妨げないか確認します。さらに、本番前には衣装を着た状態で椅子に座り、シルエットや客席からの見え方をチェック。立ったときのドレスの広がりを見ながら、パニエ(ドレスやスカートの下に履くアンダースカート)を入れるかどうかも考えています。特に気をつけたいのが、ドレスの着丈。長すぎる裾は、歩きにくいだけでなく、ピアノのペダルを踏むときに巻き込んでしまうこともあります。「ドレスの着丈の採寸は絶対に妥協しないでほしいです!」
DRESS DATA
手持ちの衣装 7着
頼れるアイテム TWEEDのネックレス
よく利用するショップ tweed dress/Annabel/ドレスルーム・アミ
本番バッグの中身 安全ピン、ケープ、メイク直し、充電式ミニヘアアイロン
次に挑戦したい衣装 マーメイドタイプのドレス

TWEEDのネックレスほか、頼れるアイテムたち

💭江田さんにとって本番衣装とは?
「衣装は曲の世界観や自分らしさを表現してくれるものでもあり、演奏をより輝かせてくれる大切なパートナーだと思っています」

DRESS FILE 02:
三宅ひなたさん
大4・ピアノ演奏家特別コース

初のソロコンサートが決まったときに購入した、シャンパンゴールドのジャガードドレス

💭この一着!
照明できらめく、シャンパンゴールド

三宅さんが紹介してくれたのは、シャンパンゴールドのジャガードドレス。初めて一人でのコンサートが決まったときに購入しました。模様を縁取るゴールドが舞台照明に反射し、きらきらと見えるのが特徴です。実際にコンサートを聴いた先生からも、照明に反射したゴールドがきれいだったと言ってもらえたそう。軽く、長時間着ていても疲れにくいところもお気に入りです。

💭選ぶポイント
衣装から、曲の世界へ

三宅さんは、まず曲の雰囲気に合っているかを考えます。衣装が作品の雰囲気に合っていることで、お客さんにも曲の世界観を伝えやすくなり、自分自身もその世界へ入りやすくなると感じています。このドレスを選んだきっかけは、試着したときに「想像以上にしっくりきた」こと。新しくドレスを買うときは、手持ちのものと色が重ならないようにするのもひとつのルールです。

💭ピアノならでは
黒いピアノとの「色の重なり」も

ピアノ演奏では、肩や腕が動かしやすいことを確認します。また、ソロの演奏会では、黒いピアノと衣装が重なって見えるため、黒いドレスは着ないようにすることも。アクセサリーは、ドレスのラメや装飾に合わせてシルバーかゴールドに統一。靴はどんな色のドレスにも合わせやすいシルバーを選んでいます。
DRESS DATA
手持ちの衣装 8着
使いやすい一着 紺色の、広がらないラインのドレス
よく利用するショップ TWEED/ドレスルームアミ/AIMER
頼れるアイテム 本番のときにいつもつけている香水
ヘアスタイル 基本はハーフアップ(自分でセット)

💭三宅さんにとって本番衣装とは?
「曲の世界観に入るためのもの、気分やテンションを上げてくれるもの」

DRESS FILE 03:
大山桃暖さん
大3・ピアノ演奏家特別コース

大山さんが選んだのは、シンプルな黒のスーツ

💭この一着!
黒をベースに、小物で変える

大山さんが選んだのは、シンプルな黒のスーツです。ストレッチが効いていて動きやすく、黒いシャツも洗濯後に形崩れしにくく、シワになりにくい素材を選んでいます(遠征や長期間のコンクールに参加する際に重要)。腕まわりにはゆとりがあり、演奏するときに自由に動かせることも大切なポイントです。黒を選ぶ理由は、演奏そのものに集中してもらいたいから。どんな曲にも合わせやすく、小物によって印象を変えられるところにも魅力を感じています。

曲の雰囲気に合う小物で黒スーツに彩りを添える

(写真上)リラックスして演奏に集中できるお気に入りの香水
(写真下)前髪をアップするカチューシャは頭を締め付けないものをセレクト

💭着回しの工夫
ネクタイひとつでも、印象を変える

シンプルな黒をベースに、ブローチやネクタイで変化をつけます。レギュラーネクタイ、蝶ネクタイ、アスコットタイ、ナロータイ、ニットタイなどを使い分け、ベストやジャケットを着るかどうかでも印象を調整。ベースは同じ黒でも、組み合わせ次第で見え方が変わります。

💭ピアノならでは
見栄えよりも、まず「弾きやすさ」

必ず確認するのは、腕が自由に動くか、袖が邪魔にならないか。後輩へのアドバイスは、とてもシンプルです。「見栄えと弾きやすさなら、弾きやすさを選んでください!」さらに、本番前に一度自宅で衣装を着て、曲を通して弾いてみることもおすすめしています。実際に演奏してみることで、袖や着心地など、着ただけでは気づかなかったことが見えてくるからです。
DRESS DATA
手持ちのスーツ 5着(黒系3着、グレー1着、ベージュ1着)
手持ちのシャツ 約15着
本番靴 歩きやすくどんな衣装にも合うREGALの黒い紐靴
頼れるアイテム 血行改善効果で指があたたまるコラントッテの磁気ネックレス
本番バッグの中身 予備の靴下、香水、予備のアクセサリー
次に挑戦したい衣装 マオカラースーツ
💭大山さんにとって本番衣装とは?
「演奏の一部であり、作品の世界観や作曲家への敬意を現すものです。着ると演奏へと向かうスイッチが入ります」

PIANO DRESS CHECK

同じピアノでも、選び方は3人3色。

かわいいと思えることを自信につなげる江田さん。
曲の世界観へ入るために衣装を選ぶ三宅さん。
シンプルな黒をベースに、演奏そのものを主役にする大山さん。

衣装への考え方はそれぞれですが、3人に共通していたのは、腕を自由に動かせることでした。さらに、座ったときの姿やペダルまわりなど、「実際に演奏している状態」を想像しながら衣装を選んでいることも、ピアノならではの特徴です。

後編は、ヴァイオリン、マリンバ、クラリネット、声楽へ。
楽器や演奏方法が変わると、衣装選びはどのように変わるのでしょうか?お楽しみに!
Text / 栗本幸音(ライティング・コミュニケーター)
Photo / 本人提供