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電車の車内で奏でる音楽と語り


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ニュース

大阪音楽大学の学生が、「阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT!」のオープニングイベントとして、能勢電車の車内を舞台に開いた音楽イベント。歴史と地域をつなぐ「音の旅」の一日を追いました。

大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻ゼミ生による「阪急音物語〜歴史をつなぐメロディー〜」開催

2025年10月5日、能勢電鉄川西能勢口駅5号線ホームに停車した特別車両内で、大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻ゼミの学生によるイベント「阪急音物語〜歴史をつなぐメロディー〜」がおこなわれました。

本イベントは、同専攻のゼミ授業の一環として実施されたもので、鉄道ファンの学生の「電車の中で音楽イベントをしてみたい」という発想から誕生。打ち合わせと準備を重ね、阪急電鉄115周年・大阪音楽大学110周年という節目の年に、鉄道と音楽が出会う特別なコラボレーションが実現しました。

鉄道と音楽がつながる瞬間

イベントは学生の司会進行のもと、YouTubeでお馴染み、阪急電車館の藤田雅之館長(🔗公式YouTube「阪急電車ファン全員集合!」)によるエピソードトークと、大阪音楽大学の森本友紀学長による新曲披露がおこなわれました。

前半では、藤田館長が「阪急電車の歴史と思い出」をテーマに講演。阪急電車の前身である「箕面有馬電気軌道」(1910年開通)を紹介し、創業者・小林一三氏が鉄道事業とともに住宅地開発を手がけ、「人々の暮らしそのものをデザインした」と語りました。

さらに、「幼いころ、池田駅近くの車庫を眺めていた」という自身の原体験や、「放課後に友人と夙川の土手で機関車を見に行った思い出」なども披露。阪急電車が生活とともにある存在であったことを温かく語りました。途中では、実際に車両のマイクを使い、車掌アナウンスを再現する一幕もあり、車内は拍手と笑いに包まれました。

(写真左から)司会を務めた畑末統吾さん、藤田雅之館長

「箕面有馬電車唱歌」を学長が生演奏

車内の一角にキーボードが設置され、いつもの座席はこの日だけの観客席に。本学学長によるピアノ演奏が披露されました。演目は、1910年の開通を記念して制作された「箕面有馬電車唱歌」。歌詞には梅田・中津・服部などの駅名が登場し、沿線の風景や人々の暮らしを想起させる内容となっています。

司会の学生が「大阪音楽大学の最寄駅・庄内駅の名前が出てこないのは、開業が1951年と比較的新しいためなんです」と解説すると、会場からは驚きの声があがりました。音楽と鉄道、そして地域の歴史を結びつける興味深い時間となりました。

演奏する森本友紀学長

歴史を未来へつなぐキャンパス

トークの中では、大阪音楽大学の歩みにも触れられました。本学は1915年(大正4年)創立。1954年に現在の庄内キャンパスに移転し、庄内駅の開業(1951年)からわずか3年後にその地に根づきました。阪急電鉄との「ご縁」を感じさせるエピソードとして紹介され、会場には共感の声が広がりました。

また、阪急電鉄を親会社として1936年に発足した阪急軍(1947年阪急ブレーブスに改称、現オリックス・バファローズ)の応援歌を紹介。阪急文化の広がりを音楽とともに振り返りました。

昭和30年頃の庄内駅と北側の踏切(大阪音楽大学100周年史より)

車内に広がる温かな空気

イベントの終盤、車内には自然と笑顔と拍手が広がっていました。取材を通して感じたのは、電車という空間が、人と人をつなぐ温かな場所になっていたことです。電車の中は、普段は目的地へ向かうための「通過点」のように感じていました。しかしこの日は、座席が観客席となり、笑い声や拍手が生まれる温かな空間へと変わりました。電車の中で音楽イベントをおこなうという、新たな可能性を実感しました。

来場者の中には「昔、阪急電鉄で働いていた」という方もおり、「思い出の場所で歴史の話や音楽を聴けて嬉しい」と語られました。また、子ども連れの参加者も多く、「電車が大好きで、この日を楽しみにしていた」という声も聞かれました。

会場となった車両では、川西能勢口駅近くの「ベーカリーシナノ」や「みさご珈琲」が出店。シナモンロールや手淹れのコーヒーの香りが漂い、地域と音楽が調和するイベントとなりました。

やりたいことと現実のあいだで

企画を担当した学生は、こう振り返ります。

「鉄道が好きすぎて、自分の知識と現実にできることのギャップに悩んだこともありました。それでも仲間と話し合いながら形にできたのは、本当に良い経験でした。」

学長による新曲では、大学の終業チャイムから始まり、「阪急電車に乗って出かけよう」「お家に帰ってゆったりしよう」といった情景やドラマティックな出会いなどが音楽で描かれました。ホームで耳にするあのメロディーや、どこか懐かしいフレーズが織り交ぜられ、最後は宝塚歌劇を思わせる華やかなメロディーで締めくくられました。

▲ 新曲の動画を近日公開予定。お楽しみに!

音楽で、人とまちをつなぐ

学生のアイデアから生まれた「阪急音物語〜歴史をつなぐメロディー〜」。鉄道と音楽、そして地域の人々がひとつになるこのイベントは、まさに「歴史をつなぐ」時間となりました。日常の風景の中で音楽を楽しむ新しいかたちを提示しながら、学生たちは、音楽が人とまちをつなぐ力を実感する貴重な学びを得ました。

Text / 栗本幸音(ライティング・コミュニケーター)

\ 沿線で音楽イベント続々 /
「阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT!」

阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT!は、阪急宝塚線沿線に点在している複数のホールや大学の施設が連携し、音楽を軸とした場をリレー形式で「駅伝」のようにつなぎ、沿線の音楽文化の魅力を創出することを目的としたプロジェクトです。「音楽で人と地域をつなぐ」ことを目指す大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻の学生が、地域のホールと連携して運営にあたっています。2025年度のテーマは「この街には、音楽がある。」です。阪急宝塚線沿線地域の音楽文化を再発見するきっかけを作りたいという思いが込められています。

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