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〈レビュー〉大阪音楽大学第68回定期演奏会


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レビュー

大阪音楽大学の管・弦・打楽器の各専攻等で学ぶ学生が一堂に会する大阪音楽大学管弦楽団。毎年12月に行われる定期演奏会は、学生たちの日頃の学びの成果の発表であると同時に、世界で活躍するマエストロとその音楽を吸収しようとするオーケストラの協演が見どころのコンサートでもある。今回のマエストロは2022年の第65回定期演奏会(C. オルフ《カルミナ・ブラーナ》ほか)以来の登場となる大植英次。どのような演奏になるかワクワクしながら、ザ・シンフォニーホールへ足を運んだ。

2025年12月6日公演
ー P r o g r a m ー


G.F.ヘンデル
組曲「王宮の花火の音楽」
G.マーラー
交響曲 第5番 嬰ハ短調

コンサートは2部構成で、前半はヘンデル作曲の《組曲「王宮の花火の音楽」》。その名の通り、イングランド王家が戦勝を祝うために催した花火大会のために作曲された曲だ。初演時は王の意向と屋外の演奏という事情もあり管楽器と打楽器を中心とした軍楽隊の編成だったが、のちに弦楽器が加えられたという(後者の版では一般的に打楽器は用いられない)。今回演奏で使われたのは弦楽器ありの後者の版が基調だろうがところどころ打楽器が効果的に用いられていたので、いわば“ハイブリッド版”だったのだろうか。〈序曲〉の始まりを告げるスネア・ドラムのロールや2楽章〈ブレー〉のタンバリンといった打楽器は、華やかなバロック音楽の世界を現出させるのに成功していた。また、パイプオルガン前のクワイア席にはトランペットとホルンが左右対称に配置されており、見た目にもおもしろい立体的な音像という目的を果たしていた。

第3楽章の〈平和〉ではホルンとフルートが、第4楽章〈歓喜〉ではトランペットとティンパニが、第5楽章の〈メヌエットⅠ・Ⅱ〉ではオーボエとファゴットのダブルリード属の楽器が、それぞれ文字通り息ぴったりなアンサンブルを聴かせていたことも印象深い。筆者の専門である合唱音楽には「メンタル・ハーモニー」という言葉がある。長い時間と共に過ごし、精神的にも一体となった演奏を意味する言葉だ。先述の楽器たちにはまさしくその「メンタル・ハーモニー」を感じることができた。

それにしても学生たちの指揮台の上のマエストロを見るまなざしのなんと美しかったことだろう。これまでの学びの集大成をステージで発揮しようとする学生たちの、マエストロの一挙手一投足を見逃すまいと捉えて離さない視線が何よりの印象に残っている。

後半の第2部はヘンデルの初演から150年ほど経ったマーラーの《交響曲 第5番》。第1楽章の「葬送行進曲」はトランペット独奏のファンファーレから始まる。プレッシャーがかかるソロだが、堂々とした吹きっぷりで見事に大役を果たした。

トランペット・ソロは大学4年の岸田龍弥さん

第4楽章は有名な「アダージェット」。今年10月に亡くなった俳優ビョルン・アンドレセンの妖しげな魅力が光る映画『ベニスに死す』での劇中音楽としての使われ方を知っている身からすると、もっと甘い味付けになっても決して過剰ではないように感じた。

正直に告白すると、この1時間超のシンフォニーを全身からすさまじい熱量を発散させながら暗譜で引っ張っていこうとするマエストロに対し、演奏者側がまだ完全に咀嚼し切れているとはいえないように筆者は思えた。

マーラーの交響曲はおそらく巨きな壁である。そうした壁に向かって何度も挑み続けることで、音楽の女神ミューズが微笑んでくれることもあるかもしれない。終楽章のフーガからは演奏に一体感があり、壁を超えた向こう側にある音楽が顔をちらりと顔を覗かせていた。

来年12月5日に開催予定の第69回定期演奏会はユベール・スダーンを指揮に迎えて。新たなマエストロと学生の出会いでどういった化学反応が起きるか、楽しみである。

Text / 坂井威文Photo / 飯島隆(飯島隆写真事務所)

坂井威文(Takafumi Sakai)
合唱指揮者、合唱文化研究者。大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻卒業、同大学院音楽学研究室修了。豊中などで13の合唱団の指揮・指導を行なっている。大阪府合唱連盟理事、関西合唱連盟主事、宝塚国際室内合唱コンクール委員会理事。