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連載【セルフプロデュース】電通ビジネスデザイナーに学ぶ、「あなたらしい戦略」への道筋


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さまざまな視点
今春本学でスタートしたのは、全国でもめずらしい「演奏領域におけるセルフプロデュース」を学べる特別講義。各界のトップランナーから、自分の表現をしっかりと周りの人に伝えていくためのノウハウを学んでいます。コピーライターとしての業務経験もある、株式会社電通のビジネスデザイナー・越澤太郎さんを迎えた今回のテーマは「あなたらしい戦略を持とう」です。
- Topics -

自分の強みを見つけ、戦うためにできることは

――ここからは、講義のナビゲーターを務めた大阪音楽大学准教授の赤松林太郎さんとのアフタートーク。さらに深く、セルフプロデュースの核となる考え方に話が及びます。
赤松:企業コンサルティングの戦略的思考を交えて講義いただきましたが、例えば商品の広告を作るには、メーカーが伝えたいことと、お客さんが求めることの温度差があるとうまくいかないですよね。

越澤太郎さん

越澤:そうですね、市場ではお客さんの求めることがある観点では正解です。両者にギャップがあるから、僕らの広告という仕事が存在するのでしょうね。

赤松:セルフプロデュースをするには、お客さんの視点=市場が今どんな空気感で、どんな時代なのかをしっかり認識しないといけないということですね。

越澤:そこを突き詰めるのはとても難しいのですが、企業も近年は「この先の消費はどうなるのか」と見極めに悩んでいます。新型コロナウイルスの影響だけでなく、生活者の消費行動が以前と変わってきている面があります。誰しも未来予想はできませんが、今がどういう状況なのかを自分なりに見て、考えておくことが必要です。
赤松:「自分が泳いでいる海はどんな海なのか?」を知らないと船の作りようがないですからね。また、越澤さんが講義の最後に「言葉は怖い」と仰ったことがすごく響きました。SNSは言葉に対するセンシビリティが失われていると感じることが多くて、匿名だからと乱暴なことを平気で言えたり、心の本当の汚いところを出してしまったりする面がありますよね。
越澤:SNSは、思っていることの数割増しで言葉が強くなりますから。フェイクの情報も相当数流れていて、根拠が見えないこともたくさんありますし、情報の選別がすごく難しい時代だと感じます。
赤松:今の学生たちは、情報をキャッチしてそこに自分の立場を合わせていくことはできるけれど、自分から一歩前に出て表現する・異議を唱えたり反逆したりすることが少なくなっているように感じます。それでは表現者としては均一化するだけだなぁと。
越澤:世の中に対する「問い」が表現やアートを作ってきたとすると、そこが弱くなるのはもったいないし、ちょっと残念ですよね。カウンターを当てにいく勇気や力は、ビジネスでも、音楽やアートの分野でも重要だと思います。

半歩先を捉えて発信する時代のリーダーたち

赤松:ピアニストの角野隼斗くんや亀井聖矢くんのように、今20代でスターダムに乗って成功している人たちは、時代をよく理解しています。かつてベートーヴェンがそうだったように、一歩先ではなく半歩先に行ってジェネレーションリーダーになっていますね。

赤松林太郎さん(左)と越澤太郎さん(右)

越澤:世の中に定着させるための中間地点である半歩先、「0.5」ぐらいのところを出せる人が成功すると感じます。ビジネスでもすごく優れた技術があって「これは一歩先を行くものである」と打ち出しても、世の中がそれについてこなかった例はたくさんありますから。
赤松:音楽家の渋谷慶一郎さんは、AIが出始めた2012年に初音ミクを使ったオペラを発表しました。しかも、一番受け入れられるであろうパリを舞台に選んで成功を収めました。時代を把握して、その先を描いて、とがった部分を見せるんですよね。そこがうまい。そのとがった部分が芽だとすると、ちゃんと今の時代を養分にできているということです。しかしその芽がSNSによってどんどん均一化されていく気がします。評論においても同様で、是か非か判断が分かれる問題に直面したとき、内心では「(非なんじゃないか)」と思っても、本心を表明しにくい時代になっている。なぜなら、多数に反して非と言えばバッシングに遭うから。
越澤:それは可能性の芽を摘んでいる気がしますね。本当の批評の文化がなくなってしまう。それはどの業界においても大問題で、いろいろと考えさせられますね。

音楽 +α の軸を持てば最強!?

赤松:先の講義では「何を伝えるか」は訓練すれば誰でもできる、その訓練を授業で組み立てていくという宿題もいただきました。

越澤太郎さん

越澤:広告のコピーを考えるのも、コンサルティングも、本質的にはそこなんです。机上に散らばっている情報から重要な要素を整理して構造化することが課題解決の入り口です。これはいろいろな分野で応用できると思うので、今日はその一部をお話しました。

赤松:その先は、1時間や2時間触れただけでは解明できないですよね。多くの人は「これさえ知れば分かる」みたいなことを期待されるのですが…。

越澤:それは世の中に存在しないです(笑)。皆さん How to みたいなものを求めるんでしょうね。「絶対にもうかる株の必勝法」という本があったとして、世に普及したら全員が勝てるようになってゲームはリセットされちゃうから、そういうものは存在しないんでしょうね。
赤松:学びや経験をコツコツ重ねることで、少しずつ身につくものですよね。「これさえ知れば」というものに釣られるのは、薄っぺらいなと感じてしまいます。私たちは音楽の技術を磨いた先に、どう展開するかという技術を学んでいません。表現の一部分として世の中でどう商品化していくか、食いぶちにしていくか、そこを考えるテクニックとして、越澤さんがおっしゃる「自分らしい戦略を持つ」ことを知っておくべきだと思いました。
越澤:無限に広がる世界で戦おうとするのではなく、得意なことや、仮説でもいいので「世の中的にはこうなんじゃないか」と思うことから導くと考えやすくなります。「音楽ができる」というのは、すごいスペシャリティーだと思うんです。スペシャルな軸が一つあって、もう一つまったく違う軸を持てば、とても強いと思うんですよ。うらやましいです。
赤松:自分がリボンのファッションが好きなら、リボンを軸にすればいい。身近なもので区別化、差別化できるか。それでどう認知してもらうかという方向にマインドが働けばいいんですよね。そう、みんな楽器や歌だけが表現だと思わなくていいんです。

どんどん検証し、セルフプロデュースを楽しもう

越澤:あとは自分を主体として見る目線と、「神の目線」みたいなもう一つの目を持って、「表現する、演奏するとはどういうことか」と問いかければ劇的に変わると思うんです。第三者目線で「こうした方がいいよね」というのがプロデュースですから、それが自分の中でできたら無敵だと思います。

越澤太郎さん

赤松:「自分のような存在はどうやったら売れるんだ、それをひと言で教えてくれ」という質問もよくありますね。
越澤:それは判断材料が少なすぎる。例えば、どこで戦っていて、何が強みなのかが分かれば戦い方も見えてきます。
赤松:ある仕事で、インフルエンサーの展開の仕方と、それによってどのくらい数字として上がるかという量的なもの、それに対する世間の見方を検証することになりました。そういうことを、もっと自ら楽しめばいいんですよね。
越澤:自分で検証できる時代ですし、セルフプロデュースには検証は欠かせませんからね。
赤松:ただ、芸事って検証すると自己嫌悪につながるんですよね。ポジティブに生きるためには、検証せずに前に進みたい気持ちもある(笑)。
越澤:ビジネスと違うところですね。確かに、石橋をたたきすぎるのは良くないですし…。
赤松:話が尽きませんが、続きはまたぜひ、今後の講義で。今日はどうもありがとうございました。
Navigator&Interview/赤松林太郎
Interview text/沖知美(高速オフセット)

越澤 太郎
〔株式会社電通 BXデザイン局 ビジネスデザイン2部 部長/ビジネスデザイナー〕2001年電通入社。コピーライターとして2005年の自民党郵政解散総選挙「改革を止めるな」キャンペーンや、アパレルブランドGUのブランディング、トヨタ・グローバルビジョン策定や2012年IMF世銀総会の総合プロデュースなどを担当。2009年に広告領域以外での顧客貢献を模索するビジネスデザインラボに所属。2016年より顧客企業の事業・業務変革、新製品・サービス開発、投資分析などのコンサルティング業務に従事。