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第53回吹奏楽演奏会


レポート

2022年3月5日(土)、ザ・シンフォニーホールで第53回吹奏楽演奏会が開催されました。今回は全曲ヨハン・デ・メイ氏の作品でプログラムを構成。作曲者自身の指揮で披露される予定でしたが、コロナ禍の影響で来日が果たせなくなり、代わって本学特任准教授の小野川昭博氏の指揮で演奏されました。プログラム前半は日本初演を含む4曲、後半は、作曲者が名誉あるサドラー作曲賞を受賞した「交響曲 第1番『指輪物語』」で組まれ、作曲者の要望により全ての曲にチェロが配置され、いつもの吹奏楽のサウンドにより一層の深みを与えていました。

ー P r o g r a m ー
  • サンマルコのこだま
  • パッチワーク・リスティッチド(吹奏楽版 日本初演)
     1.Lento-Allegro con spirito
     2.Nocturne
     3.Dance
    • ダ・ヴィンチ
       1.The Vitruvian Man
       2.Mona Lisa
       3.Vola,vola!(Ⅰ)
       4.Macchinario
       5.Vola,vola!(Ⅱ)
    • エクストリーム・メイクオーバー ~チャイコフスキーの主題による変容~

    • 交響曲 第1番「指輪物語」
       Ⅰ.魔法使いガンダルフ
       Ⅱ.エルフの森ロスローリエン
       Ⅲ.ゴラム(スメアゴル)
       Ⅳ.暗闇の旅
        a.モリアの坑道
        b.カザド=デュムの橋
       Ⅴ.ホビット族

最初の曲「サンマルコのこだま」は、金管8重奏曲の定番曲の一つ、ジョバンニ・ガブリエリ作曲「第7旋法による8声のカンツォンNo.2」の旋律を用いた作品で、左右の3階バルコニーに配置された金管楽器の交唱(アンティフォナ)の輝かしい響きで幕を開けると、後半は冨田一樹講師のパイプオルガンも加わり、華やかで贅沢なオープニングとなりました。続く「パッチワーク・リスティッチド」(吹奏楽版・日本初演)では、題名の通り、作曲者の持つ音楽的な題材がパッチワークのように繋ぎ合わされ、素晴らしい初演となりました。

「シエナ・ウインド・オーケストラ」の委嘱作品として2018年に書かれた「ダ・ヴィンチ」は、レオナルド・ダ・ヴィンチの多方面の学問に好奇心を持つ生き方に触発された作曲者のアイデアが盛り込まれています。第1楽章では「ダ・ヴィンチ・コード」と呼ばれる5オクターヴにも及ぶピアノの白鍵全てを同時に鳴らすという大胆な作風で、強奏コードがダイナミクスを伴って奏でられたと思うと、第2楽章では15世紀のイタリアを思わせるリコーダー・カルテットが登場。第3楽章からは天才発明家レオナルド・ダ・ヴィンチの独自の機械や、空を飛びたいという熱い思いを昇華させるかのような描写が打楽器による軽快な動きや金管楽器によるロングトーン、木管楽器の速いパッセージで表され、第5楽章の最後には「ダ・ヴィンチ・コード」が再び出現、力強く締めくくられました。

続いて演奏された「エクストリーム・メイクオーバー ~チャイコフスキーの主題による変容~」の冒頭では、「アンダンテ・カンタービレ」の題名で有名な「弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調」から第2楽章が、冒頭でサクソフォーン・カルテットにより奏でられ、その後次々に名曲の断片が顔を表しては変容、吹奏楽では珍しいボトル瓶での演奏や、ガムラン音楽風のマリンバ・ソロからグルーヴ感が高まると、ストラヴィンスキー「春の祭典」のフレーズが見え隠れし、最後は「序曲『1812年』」の賑やかなチャイムでクライマックスを迎えました。

プログラムの最後を飾ったのは「交響曲 第1番『指輪物語』」。全てに副題を伴った全5楽章から成る豪華な標題音楽です。第1楽章「魔法使いガンダルフ」の冒頭、金管楽器のファンファーレによる指輪物語のメインテーマが力強く響き渡ると、チェロや木管低音群による、ガンダルフの偉大さを彷彿とさせるテーマが続きます。第2楽章「エルフの森ロスローリエン」では、妖精エルフ族が住む「ロスロリアンの森」へ。妖精のテーマや鳥の鳴き声が、クラリネット・ソロによって鮮やかに歌い上げられ、神聖な世界に惹き込まれます。第3楽章「ゴラム」では指輪を奪おうとするゴラムの不気味な姿や仕草、笑い声がソプラノサクソフォーンによって巧みに描かれます。第4楽章「暗闇の旅」ではガンダルフと魔物バルログの壮絶な戦いが繰り広げられ、最後は谷底に落ちたガンダルフを追悼する、イングリッシュ・ホルンによる葬送行進曲が流れます。第5楽章「ホビット族」では、指輪を消滅させる旅を終えた主人公たちがホビット村に戻り陽気に歌い踊る場面が描かれ、指揮者や学生たちにも笑顔が溢れていました。再び金管楽器によるメインテーマが現れると、最後は新たな旅の始まりを予感させる静かな低音で締めくくられました。終始、物語の世界が目に浮かぶような高い表現力を伴った演奏で、その素晴らしさに、無音となった会場からは指揮者と学生たちに惜しみない拍手が自然と沸き上がりました。

コロナ禍にも関わらず開催できた喜びに満ち溢れた演奏会は、温かい拍手の中、指揮者による学生を労うカーテンコールを何度も繰り返した後、観客からのアンコールに応えて終演となりました。
撮影/飯島隆