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新入生、在学生の皆さん、保護者の皆さんへ <理事長 中村孝義より>


2020年4月28日

新入生、在学生の皆さん、保護者の皆さんへ

学校法人大阪音楽大学
理事長 中村孝義

1.はじめに
 我々音楽関係者にとって記念すべきベートーヴェン生誕250年の年、また日本にとって待ちに待ったオリンピック、パラリンピックの年であった2020年(令和2年)の年が明けた時、我々は日本が、否世界が、よもや現下のような非常事態に直面しているとは夢にも思っていませんでした。ご承知のように、新型コロナウィルスに感染している人は世界ですでに300万人に及び、死者は21万人を超えています(4月28日現在)。イタリア、スペインを始めとするヨーロッパ諸国はもとより、初動対応が遅れたアメリカでは、感染爆発の勢いはいまだ収まる気配はなく、とりわけニューヨークなどでは大きなパニックに陥っています。
 もちろんわが国も例外ではなく、様々な点での初動対応のまずさから、緊急事態宣言が4月7日に発出された後も、東京、大阪をはじめとして感染拡大の勢いは止まることなく、それに対する医療崩壊の危機さえ叫ばれるような状況に陥りつつあります。わが国では、いくら緊急事態宣言が発出されようと、憲法によって保障された自由や権利を守るため、私権を制限する強制力がないため、諸外国のような都市封鎖が実践されることもなく、この事態を収束させることが、いわば国民の一人一人の自覚と責任に任されています。

2.今こそ、国民の危機対応への真価が問われている
 わが国が先の大戦に敗戦したあと、我々が手にすることができた自由および権利は、単に自分だけが、また今が良ければよいといった利己的なものではなく、憲法第3章第12条に謳われていますように、「国民の不断の努力によって保持しなければならず、またこれを決して濫用してはならず、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」とされています。つまり今、まさに未曽有の国難ともいうべき新型コロナウィルスとの戦いにおいては、他国のように国や自治体に強制力がないがゆえに(それが補償もないという問題も生むのですが)、逆に我々国民の一人一人が、責任を持って対処していかねばならないのです。その意味では今こそ日本国民一人一人の危機対応に対する真価が問われているといっても過言ではありません。大阪音楽大学の学生の皆さんや保護者の皆様にも、ぜひこのことをご理解いただきたいと思います。
 本学では、不幸なことに3月初めに関係者に感染者が出てしまいました。しかし現下の状況を見てもお分かりのように、これはその人の責任ではありません。ましてや海外からの出入りも自由であった時期においては、いつどこでだれが感染してもおかしくないのが新型コロナウィルスでしたので、これはいわば不意の自然災害にあったようなものでした。ただ多くの関係者のご尽力により、これを拡大させることなく終息させることができました。しかしこのことによって、感染拡大を防ぎ、学生の皆さんや教職員の健康を守るためであったとはいえ、一定期間大学への立ち入りを禁止せざるを得なかったため、多くの学生の皆さんにご不便をおかけしたことはお詫びせねばなりません。
 ただ残念なことに、本学での感染拡大終息を宣言し、登校禁止を解除した翌日の4月7日に、今度は国より緊急事態宣言が発出されることになりました。休業が要請されるものの中には大学も含まれており、翌週の4月13日には大阪府知事より、改めて大学に対して休業要請が発出されました。私を責任者とする本学の危機管理委員会では緊急事態宣言発出後すぐに会議を持ち、緊急事態宣言下での休業=登校禁止を決定し、5月7日以降にガイダンスなどを行い、授業再開を5月16日にすることを決定致しました。
 大阪音楽大学で学ぶことを楽しみにしておられた新入生の皆さんや、新学年、新学期に向けて改めて勉学に意欲を燃やしておられた在学生の皆さんの落胆のお気持ちは察するに余りあります。我々音楽教育に情熱を持つ大阪音楽大学教職員にとっても、また日本有数の優れた本学の施設にとっても、学生がいないことほど寂しいものはなく、一か月以上も授業開始を遅らせねばならなかったのは断腸の思いでした。しかし先ほども述べましたように、現在の封鎖は、なにも本学だけが好き好んでやっていることではなく、あくまで学生の皆さんや教職員の健康を守ることを第一義に、さらには社会における公益性の高い公器としての意味を持つ大学が、現下の危機的状況において、社会に新型コロナウィルスが蔓延することを防ぐためには、果たさねばならない責任でもあるのです。その責任を果たせないようでは、大学に、またそこに帰属する学生や教職員に付与されている様々な自由や権利は保証されません。学生の皆さんや、保護者の皆様も、大阪音楽大学の存在を担うお一人として、ぜひこのことをご理解いただきたいと思いますし、また自覚していただければ有難く存じます。

3.5月16日に授業を再開します 遠隔授業を導入します
  遠隔授業推進支援金を給付します
 現在の状況は必ずしも楽観できるものではなく、すでに5月7日以降の緊急事態宣言の延長がささやかれています。しかし学生の皆さんの心配されるお気持ちや、今後の学事日程を鑑みますに、5月16日に授業を再開することは大学としても必須のことであります。もし5月7日以降も皆さんに登校していただくことが難しい場合、特に学科系授業に関しましては、すでに他の総合大学などでは試みられている遠隔授業を取り入れ授業を開始したいと考えています。現在その授業内容をより密度の濃い、学生の皆さんにとって真に有益なものになるよう、教員全員が研究を重ねていますのでどうかご理解頂きたいと思います。
 ただ皆さんが最も楽しみにしておられ、また期待もしておられるに違いない実技レッスンは、本来が対面でこそ大きな成果が上がり、また意味のあるものであることは言うまでもなく、これをどのように実現していくか、現在の感染拡大の状況下でどのように可能かを、教職員が知恵を絞って考えています。皆さんができるだけ満足できるものにするよう計画を練っていますので、この方法についての具体的なことは学長からの発信をお読みください。
 また遠隔授業を開始するにあたり、学生の皆さんには、各自で遠隔授業に対応する環境を整えていただく必要が生じるため、大学から遠隔授業推進支援金5万円の給付を行いたいと考えています。本学のような小規模大学は、現在多くの困窮を極める中小企業同様、この緊急事態に対応する緊急の出費や、遠隔授業などに対する新たな設備投資が必要なことから決して経済的に余裕のある状態ではありませんが、教職員すべてが身を切る覚悟で支援することを決定いたしました。

4.学生相談窓口の設置
 また現下の状況において、様々な意味で資金的困難を生じている方もおられるかもしれません。この場合は、どうぞ一人で思い悩まず、大学の相談窓口にご相談ください。こうした困難な状況下においても、音楽を志す皆さんのお気持ちを大阪音楽大学で最後まで貫徹していただくために、大学は最大の支援を惜しみません。また2020年度授業料等の納付についても、その納付期限を6月1日まで延長することを決定いたしました。

5.改めて大学での学びとは
 大学では、高校までとは異なり、教員や授業からすべてが与えられるわけでも、決まった模範解答が与えられるわけでもありません。大学で学ぶということは、もともと決まりきった一つの答えを得ることが目的ではないのです。大学では、学生一人一人が、簡単には答えを得ることができないような難しい質問を自らに発し、その答えを探して不断の努力を重ねる中で、自らの人間としての成長、音楽人としての成長を果たすということが何よりも重要です。だからこそ教員の時宜を得た貴重な示唆が大きな意味を持ってくることになるのです。
 皆さんが音楽の実技を学んでいく時にも、他の芸術や学問を学ぶ時にも、一人一人に、いわば答えのない質問に挑戦していく気概が必要です。現下の困難な状況を単にネガティヴに捉えるのではなく、与えられた時間と頭を使って、また遠隔授業やレッスンにおける教員の示唆や助言を糧に、どのように困難を克服し、自分を成長させていくことができるかとポジティヴにとらえていただくことによって、きっと皆さんの前に、今までより素晴らしい新しい風景が見えてくることは間違いありません。我々が新型コロナウィルスを克服して、近い将来また大阪音楽大学で皆さんの元気な顔に出会えるのを心より楽しみにしています。