大阪音楽大学・大阪音楽大学短期大学部
理事長 学長 中村 孝義
大阪音楽大学/大阪音楽大学短期大学部
大阪音楽大学 専攻科/大阪音楽大学 短期大学部 専攻科
大阪音楽大学 大学院
2011年度(平成23年度)入学式 学長式辞
先ほど、このたびの東日本大震災で亡くなられた方々に対し、皆様とともに黙祷をさせていただきましたが、入学のお祝いを申し上げる前に、あらためて被災地の方々にお見舞いを申し上げるとともに、ご逝去された方々に心から哀悼の意を表したいと思います。
さて大阪音楽大学(大阪音楽大学短期大学部)に入学してこられました252名(157名)の皆さんご入学おめでとうございます。本学の全教職員を代表して、ここにご列席の来賓の方々や教職員とともに、心よりお祝い申し上げます。またご臨席賜りましたご家族、関係者の皆様方にも心よりお祝いを申し上げます。
われわれも16年前に、大地震の恐ろしさを、身をもって体験しました。今なお東日本各地で、多くの方々が、厳しい避難生活を余儀なくされている現状を思いますと、お祝い事は控えた方が、という思いもよぎらない訳ではありません。
しかしここに集まった前途有望な若い皆さんが、与えられたチャンスを精一杯生かし、社会に貢献できる、たくましい音楽人に育つことこそが、日本の明るい将来に繋がるに違いない、その門出をぜひ祝福したいという、大阪音楽大学全教職員の気持ちを、どうかご理解いただけたらと存じます。
さて、希望に満ちた皆さんの顔を眺めていますと、我々の心にも一陣の新鮮な風が吹き込み、皆さんとともに奥深い音楽の世界の探求に、改めて向かおうという意欲が湧いてきます。本学を目指してこられた皆さんのことですから、すでに大阪音楽大学のことについては十分にご承知のことと思いますが、ここで少し本学のことを紹介させてください。
本学は、後ほど皆さんと一緒に歌います校歌の歌詞にも記されていますように、大正4年1915年に永井幸次先生によって設立されました。2015年には、いよいよ100周年を迎える、大阪随一の伝統を誇る音楽専門の大学です。この間に輩出しました卒業生はなんと約3万3千名にも及びます。この方々が、音楽界、教育界、また一般社会において素晴らしい活躍をしておられることは、皆さんもよくご存知のことと思います。
このように長い伝統と実績を持つ本学の設立にあたって、創立者、永井幸次先生は次のような言葉を残しておられます。 「永遠之ノ学校ガ、大大阪、否関西音楽ノ中心トナルベキ発達ヲ遂ゲ、遂ニ世界音楽並ニ音楽ニ連セル諸般ノ芸術ハ、之ノ学校ニヨッテ統一サレ、新音楽、新歌劇ノ発生地タランコトエヲ祈願スルモノナリ」。
私は常々、この気宇壮大な言葉の中に、本学の目指すところは全て集約されていると考えてきました。そして本学は、式次第の表紙にも記していますように、この言葉の中の「世界音楽並ニ音楽ニ連セル諸般ノ芸術ハ、之ノ学校ニヨッテ統一サレ、新音楽、新歌劇ノ発生地タランコトエヲ祈願スルモノナリ」を建学の精神としてきました。そこに込められた精神や思いを一つずつ実現していくこと、それが本学に関わるものすべてに課せられた課題なのです。
例えば、新音楽、新歌劇の発生地たらんという願い、(この「新」という言葉を、私は常に意欲的、創造的であること、と解釈していますが)、その一端は、本学の音楽活動の成果を、内外に発信するこのザ・カレッジオペラハウスの活動が見事に果たしてくれています。世界には数え切れないくらいの大学がありますが、大学内に、プロのオーケストラや合唱団まで備えたオペラハウスを持つ大学は、本学が恐らく世界でも唯一ですし、90周年の2005年には、ここで上演された本学主催のオペラ公演が、第60回記念文化庁芸術祭の栄えある「芸術祭大賞」を受賞するという形で、永井幸次先生の夢の一つが実を結んでいます。
本学では、本年2011年を、来る2015年の創立100周年に向けての記念事業開始年度と位置づけ、建学の精神に盛られたキーワードを今一度改めて読み解くという姿勢で、様々な事業を展開していく予定です。本年のキーワードは建学の精神の冒頭に掲げられている《世界音楽》。様々な拡がりや意味を持つ《世界》と、われわれが追究してやまない《音楽》が、果たしてどの様な関係で結ばれているのか、皆さんもしっかり考えながら、勉強を進めてくだされば、今までとは違った《音楽の世界》が皆さんの前に広がってくるに違いありません。
さて皆さんは、今日この入学式に臨まれ、おそらく期待で胸を膨らませながらも、新しい環境に一歩を踏み出すことに一抹の不安を抱いておられるかもしれません。しかし不安を感じることは決して悪いことではありません。期待と不安が入り混じっているからこそ、人間は勇気を持って挑戦しようとする気持ちの昂ぶりと、冷静に慎重にことを進めていく理性のバランスを取ることができるからです。 わたしたちは、その両方にしっかりと応えるために、様々な工夫を行なっています。例えば皆さんが、今までの高校とはかなりシステムの異なる大学という学習環境にスムーズに入っていただくために、全学生必修の大学への導入授業としての「教養基礎セミナー」や短大への導入授業としての「大音コミュニケーション入門」などで、皆さんの不安を払拭するよう手助けします。その中の一つとして、私自身が直接皆さんに、大学での学びについて語りかける「学長特別講座」も行っています。
またわが国ではまだ余り例のないことですが、皆さん一人ひとりの実技のさらなる向上や挑戦する熱意に応えるために、どの先生のレッスンも自由に見学することが出来る「オープン・レッスン」制度や、大学では希望すれば前期、後期に一回ずつ、レッスン担当教員以外の教員のレッスンも受けることが出来る「プラス・レッスン制度」、短期大学部では他学には見られない独自の第1主科、第2主科という二つの主科を持つ制度も導入しました。さらに給付奨学金制度や、ドイツ、イギリス、フランス、中国、韓国など海外の7校の提携音楽大学に留学することができる海外留学制度も行なっています。
こうしたものにどんどん挑戦する積極的な姿勢こそが、皆さんに新しい世界を開く大きなチャンスを生みます。与えられたチャンスにはどんどん挑戦し、利用するということを忘れないでください。今後も本学は、皆さんの学生生活をより充実したものにするため、また皆さんが社会に出てから活用することができる、様々なノウハウや付加価値を身に付けていただくべく、努力を続けてまいります。
ところで大阪音楽大学は、音楽をしたくてうずうずしているものが集まっている場です。きのうまで弾けなかった音楽が弾けるようになると、皆さんはきっと、今度は誰かとその曲を合わせてみたくなる。そんな時は皆さんの周りにいる人にぜひ声をかけてください。きのうまでは出せなかった声が出せるようになると、今度は誰かのために歌を歌いたくなる。そんな時もぜひ試みてください。そうすると、初めは自分ひとりだった小さな世界に、仲間が増え、その曲や歌を聴いてくれる人が集まってくる。世界が少しずつ広がり、つながっていく楽しさを知ったとき、人は、もっとたくさんの人に音楽を届けてみたい、きっとそう思われるに違いありません。大阪音楽大学はそうした学生であふれる大学でありたいと思っています。
私は、皆さんが、音楽を真ん中にして、そこから、さらに世界を広げていける人間に育って欲しいと思っています。創立以来、わたしたちは、音楽の技術を高めるとともに、音楽を通して、学生たちが一人の人間として成長することを大切に考えてきました。例えば先ほども、その充実ぶりをご紹介したザ・カレッジオペラハウスの活動。オペラという総合芸術や様々な異分野の音楽に触れることによって、専門分野以外の学芸と繋がる経験をつむことができます。
皆さんの音楽力をきっちり支える音楽基礎教育や、専門の幅を大きく拡げる音楽専門教育、皆さんのキャリアを支援する、音楽マネジメントや音楽療法、音楽指導法や音楽研究の科目、さらには教養教育や語学教育も充実しています。様々な学問や人との出会いによって、ぜひ自分をより大きな人間へと成長させてください。
また大阪音楽大学での学びを通して、相手の気持ちを思いやることや、自分の音楽に対する気持ちを見つめ直すことで、音楽との向き合い方をさらに深めて欲しい。どうか音楽にかかわる全てのことを力に変えて、競い合い、磨きあい、努力し、我慢し、持続し、その結果として得られる達成感の素晴らしさをぜひ味わって欲しい。ひとつのことをやり抜くことで生まれる、折れることのない太い芯を身に付けて下さい。音楽は生きていく力とも呼べるものを教えてくれます。
そして、ぜひ人の心に届く音楽を創り出すことの出来る、たくましい音楽人に育って欲しい。音楽を広める人、音楽を語る人、音楽を守る人、たとえ楽譜のないところでも、大阪音楽大学で獲得した太い芯を自信に、目の前の世界を広げ、人と出会い、想いを届け、心を動かし、たくさんの笑顔を作り出す、そうした《音楽人》になって欲しい。私は、音楽から学んだことを糧にして、社会や世界を豊かにできる人すべてが《音楽人》であると思っています。
力強く生きる《音楽人》を大阪音楽大からと、心から念じて、皆さんの入学へのお祝いの言葉としたいと思います。


