大阪音楽大学 広報誌「MUSE」

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対談特集

対談特集 仲道郁世特任教授 岡原慎也教授 ピアノに魅せられた人生

音楽の素晴らしさを社会に訴える力を持って

岡原
仲道先生は東京を拠点として活動しながら大阪でも教えていらっしゃいますが、関西はほかの地域と比べて特徴がありますか?
仲道
うまく文化のミックスができる土地柄なのだということを感じますね。例えば食べ物にしても日本的なものと西洋的なものをアレンジして独自のものを作ってしまったり。岡原先生ももともと関西ではないですよね?
岡原
そう。だから関西人の「自由な発想」とか「自分で道を切り開いていく能力」は非常に高いと思う。
仲道
ただ、近頃は世の中に余裕がなくなってきて、関西人独特の「ノリ」を許してくれない状況になっている。特に音楽を取り巻く環境には厳しいものがあります。例えばオーケストラは予算がどんどんカットされて非常に苦しい状況になっていますよね。以前のように「私弾く人、あなた聴く人」という構図は成り立たなくなっているわけです。
岡原
僕らが子どもの頃は「いい高校へ行っていい大学に入っていい会社に就職して一生いい生活できる」みたいな、そういうエリートコースの雛形みたいなものがあった。ピアノの世界でも、小さい頃からピアノだけを頑張ってコンクールに入賞して、ピアニストとして成功するんだ、というようなそういうストーリーは、今は通用しなくなってきている。
仲道
音楽家は本来、皆「音楽は社会で共有するとても素晴らしいもの」という意識を持っているわけです。だからこそ、それをどう社会に訴えていけばいいのか。その方法論を開拓していかなければならない。それを担っていかなければならないのが若い学生たちだと思う。そういう気持ちで「大学を利用する」くらいの気概を持って学生生活を送っていただきたいと思います。

想像以上に素晴らしい音楽の効用

岡原
仲道先生はコンサート中にトークやお芝居を入れたりされていますよね。
仲道
音楽に入り込むきっかけは人それぞれだと思うんです。「クラシック音楽は自分にあまり関係がない」と思っている人に対して「これは素晴らしいものなんだから聴きなさい」と言ったところで本当に音楽の喜びを感じていただけるのかなという。それがトークとかお芝居という形になったりしているんですが、まだまだ足りないと思っています。
岡原
確かに20年くらい前はクラシックの演奏家がステージでしゃべるなんて邪道だって思っていた人も多いかもしれないね。
仲道
音楽がいかに素晴らしいものかということを、もっと社会に発信していきたいという思いから出てくるものなんですよ。音楽の効用は想像以上にすごくて、例えばその会場にいる人同士のコミュニケーション能力が高まるなんてこともあるんです。また、音楽に関わった人が自分という存在を自己肯定できるようになったり、自分をもっと表現したいと思うようになったりすることもある。
岡原
そんな素晴らしい音楽の力に気づいて活動していくための指導が我々教員や大学の役割であると思います。
仲道
そうですね。大阪音楽大学は授業の種類も豊富で、学ぼうと思えばいくらでも学ぶことができる。だから貪欲になんでも経験したいという気持ちでいてほしい。
岡原
僕も「好奇心の塊」みたいな人間ですからね。強い好奇心があるからなんでも経験したいし吸収したい。
仲道
それ大事ですよね。

なんのためにピアノを弾くのか常に自分に問いかけること

岡原
学生たちにいつも問いかけるのは「なんのためにピアノをやってるの?」ということ。きちんと答えられる人は意外に少ない。ほとんどの人は子どもの頃からお稽古事としてピアノを弾いているけれど、いつまでもその延長線上にいるからピアノが楽しくないわけです。
仲道
そうですね。常に「なんのためにピアノを弾くのか」と自分に問いかけることが大切。自分の人生において、社会の中において、音楽をすることの意味を探してほしいと思います。
岡原
僕自身は高校生の頃に「ピアノを弾く意味」みたいなものを見つけられたと思う。それまでも一生懸命やってきたけれど、どこかの時点で「自分の魂の発露」としてのピアノに変わった。「なんのためにピアノを弾くのか」が分からないまま続けても楽しくもないし満足感がないでしょう。
仲道
これは一生かかって探すものだと思う。それを手助けをするのが私たちの使命。もがきながら苦労するかもしれないけれど、これから大阪音楽大学の卒業生たちが社会で多様な活躍をして、音楽で日本を栄えさせてもらいたい。大きな話になってしまうけれど、文化にはそれくらい力があると信じているし、大きな期待を持っています。
岡原
楽しみですね。

今年度入学生よりピアノ専攻の学生全員に特任教授(仲道郁代、有森博、クラウディオ・ジョゼ・リスボア・ソアレス)によるレッスンを受けられるチャンスを設けました。
受講資格は各年度の新入生のみで、特任教授によるオーディションで選抜。年間30回のレッスンのうち10回を特任教授が行います。

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