関西音楽界における劇場・ホールや団体等の「連携」の取り組み

複数の劇場連携によるオペラ共同制作が世界の潮流となりつつある中、2008年(平成20年)2月2、3日、びわ湖ホールが自主制作オペラとしてR.シュトラウス《ばらの騎士》を上演した。ベルリン・コーミッシェ・オーパーの協力を得た公演で、びわ湖ホールと神奈川県民ホールという公共ホールの連携による国内初の本格的なオペラ共同制作の舞台となった(東京二期会も制作として名を連ねている)。2008年(平成20年)度、びわ湖ホールは県の財政難により支出金が削減された(同年3月、同ホールの“半年間休館”といった一部報道をきっかけとして「びわ湖ショック」とも呼ばれる全国的な反対署名運動が巻き起こったりした)が、びわ湖ホールは同年度以後も神奈川県民ホールなどとのオペラ共同制作を着実に継続しシリーズ化していった。これは、文化庁による当時の「舞台芸術共同制作公演」の助成制度(複数劇場・団体による舞台制作に経費の半額が補助される)に大きく後押しされてのことでもあったと言えよう。事実、2009年3月14、15日に共同制作上演されたプッチーニ《トゥーランドット》は、「舞台芸術共同制作公演」としてその年度唯一採択されたオペラ公演であった。同年6月には兵庫県立芸術文化センターが日本オペラ連盟、東京二期会、愛知県文化振興事業団と共にビゼー《カルメン》を共同制作し、各地で巡演している。国内の劇場・ホールや団体などが提携したオペラ制作の形態は、この後全国的な広がりを見せてゆくことになる。

こういった国内オペラ共同制作に先立ち、1992年(平成4年)6月、関西歌劇団がイタリア音楽協会の協力によりミラノ・スカラ座から演出家や舞台装置・衣装などの提供を受け、マスカーニやレオンカヴァッロのオペラを上演。海外との共同・提携公演は関西では既に1990年代より行われていた訳であるが(1993年11月には市民オペラ団体である堺シティオペラがノヴォシビルスク歌劇場との提携公演を開催)、前述の国内オペラ共同制作と同様に費用軽減や舞台効果の向上のほか、国際的な人材の交流、そして制作のノウハウの共有といった情報のネットワークを形成する点に大きなメリットがあった。

また、オペラ公演に限らず、2006年(平成18年)9月には民間ホールであるいずみホールとフェニックスホールが初めて連携コンサート企画を行い、現代音楽シリーズを共同で開催。これは、楽曲編成に合わせて中規模ホールの前者と小規模ホールの後者を使い分け、様々なジャンルの作品の魅力を広く伝えようとするものだった。ホールが提携し、演奏会制作に関わる情報を共有して工夫を凝らしつつ聴衆を開拓する。まさにホールという舞台現場の点と点が結ばれることにより、より結束力の高い音楽文化の発信が行えるという発想である。今日的な観点からすれば、劇場・ホールや音楽団体におけるこういった「提携」の取り組み-一種のネットワーク形成-は、ある意味、通信技術の発展・普及に伴なう現代の情報化(情報ネットワーク)社会と見事にリンクする動向でもあったと捉えることができるのではないだろうか。

2012年(平成24年)6月の「劇場・音楽堂等の活性化に関する法律」、および同法第16条に基づく2013年(平成25年)3月の「劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針」、そして2015年(平成27年)5月に閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(第4次基本方針)などにより、文化施設(劇場・ホールなど)、実演芸術団体、国・地方公共団体、教育研究機関(大学など)の社会的ネットワークや協力の推進をはじめ、地域における文化芸術振興、専門的人材の育成、国際的交流などの一層の進展が期待されている。

 

関西歌劇団第62回定期公演
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武満徹没後10年 4つのコンサート
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