創立90周年─音楽を拡げる

2005年(平成17年)春、学長就任以来、短大改組、専攻横断型授業、短期学外研修助成など時代に即した様々な改革を進めてきた西岡信雄学長・理事長は、創立90周年を迎えるにあたり、学生たちと社会に対し、本学の未来像をより一層明確に示す新しいメッセージを発信すると表明した。それは大学変革の目標として「音楽を拡げる」というものであった。

この「拡げる」の中には色々な意味が込められていた。まずは教育領域の拡大である。同年4月から「楽理専攻」を「音楽学専攻」に、「箏専攻」を「邦楽専攻」に改めた。これにより、音楽学専攻はより広範な諸科目を取り込み、邦楽専攻には雅楽の授業が開講された。また、舞踊系実習科目を導入、体育をスポーツ系と舞踊系に分け、音楽の基礎ともなる舞踊系授業を全専攻生が選択で受講できるようにした。もう一つは国際交流の拡大である。本学は古くから海外の音楽家や研究者の招聘を盛んに行い、学生たちが海外で演奏する機会もあったが、教育機関同士の国際的な相互交流の仕組みは具体化していなかった。前年の2004年(平成16年)に韓国・啓明大学校音楽・舞台芸術大学と「両大学間における相互理解の覚書」を締結し、大学間の交流がスタートした。国際交流推進委員会を設立、さらにこの動きを活発化させていく。

音楽への視野を拡げるこうした本学の意欲的な姿を社会にアピールすべく、「音楽を拡げる」をテーマに、1年間にわたり30もの創立90周年記念事業を展開することになった。その口火を切った4月9日の「日独交歓ジャズ・コンサート」、大学間交流第1号の啓明大学校との「日韓学生交流演奏会」、さらに中国も加えた日韓中3ヵ国による「東アジアの琴と箏」では、音楽による国際交流を深め、異文化への見識を広めた。新国立劇場の地域招聘公演第1弾として共催したオペラ《沈黙》は、1999年(平成11年)の《金閣寺》に次ぐ東京公演で、本学のオペラ活動の拡がりとその成功によって、「大阪音楽大学」の存在をさらに全国に広めることとなる。オペラハウスでの再演は本学に初の文化庁芸術祭大賞をもたらし、記念すべき年に華を添えた。ピアノ教員とザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団は、翌2006年(平成18年)のモーツァルト生誕250年にちなみ、5年計画でモーツァルトの協奏曲全曲演奏会を開始した。


この他の学生たちによる演奏会もそれぞれ90周年にふさわしい内容であった。大学の吹奏楽演奏会は、長年本学の教員を務めた大栗裕の作品を一挙5曲演奏。演奏機会の少ない《組曲「雲水讃」》などにも挑戦した。大学、短大の定期演奏会には、前年特任教授に就任した日本を代表するピアニスト仲道郁代、2000年(平成12年)より本学教授を務める世界的ジャズ・トランぺッター日野皓正の両教員がそれぞれソリストとして出演、満場の聴衆を沸かせた。「ジャズ・ポピュラーミュージック」~源流から現代へ~では、前年の短大改組で開設されたジャズ・ポピュラー専攻4コースの学生、卒業生、教員たちが3時間に及ぶ熱演を繰り広げた。本学と後援会主催の「創立90周年記念演奏会」はロシアを拠点に国内外で活躍する本学出身の西本智実を指揮者に招いた。

演奏だけでなく、中村孝義教員がコーディネーターを務め、「音楽の文化力」、「オペラ活動の21世紀」という2つのシンポジウムを学内外で開催。パネリストを招いて音楽の持つ文化力を様々な観点から検証し、21世紀のオペラ活動についてオペラの現場に携わる専門家が意見を交わした。また、全国的にも特に関西で盛んな吹奏楽にスポットを当て、音楽博物館が3つのイベントを企画制作。大阪城天守閣での「再現・第四師団軍楽隊着任式」、NHK大阪ホールでの研究公演「演奏と映像でたどる 関西吹奏楽150年─幕末鼓笛隊からシンフォニック・バンドへ」、隣接の大阪歴史博物館では3週間にわたり同館との共催による特別展示「古今東西 吹奏楽の楽器たち」を行った。

2006年4月2日、この特別展示の終了をもって、創立90周年特別事業は幕を閉じた。総入場者数約25,800人。本学の総力を挙げ、多方面に「音楽を拡げる」ことを試み、次なる100周年に向けて本学が進む姿を学内外に印象付けた1年であった。


 

創立90周年記念事業一覧 (創立90周年記念演奏会プログラムより)

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2月28日 記者発表

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報道関係10社が出席。西岡学長が90周年記念事業のテーマ「音楽を拡げる」の構想を表明。同記念実行委員長の赤松短大副学長が概要を説明した。出戸大学副学長、本田演奏部長、北野オペラハウス館長、井口教員らが同席した(会場:新阪急ホテル)
 

創立90周年のロゴは指揮棒をイメージし、動きのある音楽を表現。テーマの「音楽を拡げる」(年表掲出)と大学名が入った2種類のデザインがあった。8月には大型のイメージバナーも学内3ヵ所に設置され、さらに90周年の雰囲気を盛り上げた。
 
創立90周年ロゴ 創立90周年バナー    
  ぱうぜ オペラハウス O号館
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創立90周年記念事業に関する年表掲出の補足、及び2006年以降年度末までの事業は以下の通り。また、ザ・カレッジ・オペラハウス主催の事業については別項「2005年 ザ・カレッジ・オペラハウス主催公演」を参照。
 
 4月9日 「日独交歓ジャズ・コンサート」

日本におけるドイツ2005/2006にちなみ、大阪ドイツ文化センター、ヘッセン州科学文化省、大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館の全面協力により実現 した。ドイツ・ヘッセン州ユース・ジャズ・オーケストラと本学ウインズ・ジャズ・オーケストラが共演。演奏会終了後、ぱうぜ2階で親善パーティーを行っ た。
 
チラシ
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ヘッセン州ユース・ジャズ・オーケストラ

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大阪音楽大学ウインズ・ジャズ・オーケストラ

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指揮のW.ディーフェンバッハと赤松二郎教員
     
画像 画像 親善パーティーでも日独のコラボレーションが行われた
 
 5月25、26日 日韓学生交流演奏会

啓明大学校音楽・舞台芸術大学とは以前より友好関係にあり、1995年(平成7年)4月に同校の申一熙総長らが本学を訪問、教育・研究活動などの分野で交流 を深める覚書に調印していた(年表1995年4月21日参照)。2004年(平成16年)10月、改めて「両大学間における相互理解の覚書」を交わし、大学間交流をスタートさせた。その交流の第一歩として企画されたもので、翌年には本学学生が啓明大学校を訪問する。

【5月24日】啓明大学校音楽・舞台芸術大学の金蘭姫学長以下13名来日

ガイダンスを開いて西岡学長らが挨拶を行った後、ぱうぜで歓迎レセプションを開催。早くも打ち解けて談笑する学生たちの姿が見られた。啓明大学校一行は第1夜、第2夜に出演するグループごとに24日、26日に音楽博物館など学内施設の見学も行った
 
到着した一行を出迎え ガイダンス 歓迎レセプション
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自己紹介 韓国語ガイドを片手に談笑 日韓楽器談義
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【5月25日】第1夜:西洋音楽交流演奏会

室内楽6重奏とテノール独唱、ピアノ独奏に本学学生ら8名が出演。オーボエ独奏、ピアノ独奏、ピアノ5重奏には啓明大学校学生ら6名が出演した。演奏会に先 立ち、ミレニアムホールにおいて、金蘭姫(キム・ナンヒ)学長による「世界のピアノ教育事情」についての特別講義が行われた。
 
金蘭姫 特別講義 リュ・ミナ 谷浩一郎
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チェ・ユミ 丸山耕路 啓明大学校のピアノ五重奏
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【5月26日】第2夜:韓国伝統音楽と邦楽の交流演奏会

本学学生、教員ら14名が邦楽合奏を行い、続いて啓明大学校の学生5名が僧舞、扇の舞、剣の舞など6つの舞を披露、最後に李炫昌(イ・ヒョンチャン)教員がテグムを独奏した。李教員は演奏会に先立ち、ミレニアムホールにおいて「韓国伝統音楽」についての特別講義も行った。
 
李炫昌 特別講義 邦楽合奏 邦楽合奏 僧舞
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扇の舞 剣の舞 テグム独奏 日韓出演者全員
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【5月27日】

啓明大学校一行は京都を観光。二条城見学の後、武者小路千家の「宮休庵」を訪れ、日本の伝統文化である茶の湯を体験した。帰阪後開かれた新阪急ホテルでのサ ヨナラ・パーティーで金学長は、「これからもこの交流が両校だけでなく両国の発展にも寄与していくことを確信しています」と挨拶した。一行は記念写真を撮 るなど名残を惜しみ、翌28日、関西国際空港から帰国の途についた。
 
二条城見学 茶の湯体験 サヨナラ・パーティー 一行を会場出口で見送った
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 10月8、9日 日・韓・中伝統音楽演奏会・レクチャーコンサート「東アジアの琴と箏」

啓明大学校との大学間交流開始を機に、さらなる海外との交流推進を図るべく、中国も含めた3ヵ国の音楽交流事業を計画。前年10月、担当の井口淳子教員が西 岡学長の親書を携え上海音楽学院を訪問し、実現した。東アジアに共通するコト(琴・箏)をテーマに、日韓中の文化・伝統・民族性に育まれたコト類の多様性を 理解し、同時に東アジア音楽の普遍性を再認識するという企画であった。

【10月8日】日・韓・中伝統音楽演奏会(ザ・カレッジ・オペラハウス)

福岡県春日市辻田遺跡から出土した弥生時代後期の復元琴を奈良大学名誉教授・南都楽所楽頭の笠置侃一が演奏した。箏を用いた邦楽は本学教員が演奏。韓国、中 国の琴、箏は両国から若手実力派の演奏家を招き、5種類の琴、箏が演奏された。最後に川島素晴教員の90周年記念委嘱作品《Kotology》を3国の琴 と箏で合奏した。
 
プログラムより ロビーで実物展示 復元琴(日本) 古琴(中国)
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牙箏(韓国) 玄琴(韓国) 邦楽(日本) 伽倻琴・杖鼓(韓国)
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古箏(中国) 邦楽(日本) 出演者全員
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【10月9日】レクチャーコンサート (ミレニアムホール)

韓国・啓明大学校の朴美瓊(パク・ミギョン)教員による「韓国のコト類─形態と表現の多様性」、中国・上海音楽学院の陳應時(チェン・インシー)教員による 「琴の過去と現在」、日本・大阪大学の山口修(元本学教員)教員による「からだといと─属弦鳴楽器を日本の観点から比較する」の講演が実演を交えて行われ た。
 
プログラムより 陳應時「琴の過去と現在」 山口修「からだといと」
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企画・司会の井口教員 3ヵ国の講師陣 3ヵ国の演奏者たち
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 12月2日 大学第48回定期演奏会 (ザ・シンフォニーホール)

「日本におけるドイツ2005/2006」にちなみ、ドイツ生まれのヴァーグナーとブラームスの作品を取り上げた。仲道郁代教員は翌年の生誕250年を記念して、モーツァルト《ピアノ協奏曲第20番》を演奏した。
 
チラシ
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 12月17日 短大第14回定期演奏会

指揮は高橋敏仁教員。日野皓正教員が、自身が前年に手がけた映画音楽「透光の樹」からの一曲《ヴァイオレット・メランコリー》(佐藤光彦編曲)を本学ジュニア・コース管弦楽団と共演。アドリブで学生に近寄りセッションを試みるなど、学生とのジャンルを超えた熱いコラボレーションが繰り広げられた。
 
チラシ
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 2006年1月29日 「ジャズ・ポピュラーミュージック」~源流から現代~ (大阪厚生年金会館/現・オリックス劇場)

本学は1992年(平成4年)、短大の音楽専攻に日本の大学で初めて導入したジャズ・ポピュラー部門を2004年の短大改組で「ジャズ・ポピュラー専攻」として開設、さらにその教育体制を強化した。「ジャズ」「ポピュラー」「ミュージカル」「電子オルガン」の4コースの学生、卒業生たちが、日本を代表するプレーヤーの教員とともに、新専攻の魅力を披露する機会となった。アフロ・アメリカンによって創作されたジャズ・ポピュラー音楽を中心に、スクリーンに映し出した映像を交え、時代背景を考察しながら100余年にわたるその変遷をたどった。
プログラム
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会場の大阪厚生年金会館
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総合プロデューサーの塩谷教員
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 3月3日 創立90周年記念演奏会 (ザ・シンフォニーホール)

若手女性指揮者として国内外で注目を集める本学出身の西本智実が初めて母校の演奏会でタクトを振った。学生、卒業生、教員、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団、同合唱団による創立90周年記念管弦楽団131名、同合唱団155名がブラームス《大学祝典序曲》とマーラー《交響曲第2番「復活」》を演奏した。
 
開場を待つ多くの聴衆
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マーラー《交響曲第2番》
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本学初指揮の西本智実
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 3月19日 研究公演「関西吹奏楽150年─幕末鼓笛隊からシンフォニック・バンドへ」 (NHK大阪ホール)

音楽博物館が関西洋楽史研究の成果を基に、関西における吹奏楽のルーツとその発展の過程を歴史的資料の映像と演奏で紹介するという研究公演。11日から3週間にわたり隣接の大阪歴史博物館において、同館との共催で特別展示「古今東西 吹奏楽の楽器たち」を開催。関西の音楽文化にとって重要な吹奏楽を演奏と展示の両面から立体的に取り上げ、本学から関西の吹奏楽界へさらなる”活力を”送り込もうという趣旨であった。6日の関連イベントも含め、公演・展示ともに過去にない内容で、数多くのマスコミに報道され、社会的にも大きな反響があった。

【3月6日】再現 第四師団軍楽隊着任式─大阪吹奏楽の幕開け─(大阪城天守閣展望台・本丸広場)

関西の洋楽普及に大きな役割を果たした陸軍第四師団軍楽隊の着任式がこの年から数えて118年前の1888年(明治21年)3月6日午前9時より、同師団のあった大阪城内で行われたことに因み、同日同時刻の午前9時に天守閣より本学の管楽器専攻生有志10名がファンファーレを演奏。その後、天守閣前の本丸広場において、ミニ・コンサートを開催した。着任式の演奏曲と推定される5曲を創立90周年記念吹奏楽団が木村寛仁教員の指揮で演奏した。(財)大阪観光コンベンション協会共催。
 
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史上初の天守閣最上階でのファンファーレ
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118年前の関西吹奏楽発祥の地で着任式の演奏を再現
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【11日~4月2日】特別展示「古今東西 吹奏楽の楽器たち」 (大阪歴史博物館6階特別展示室)

音楽博物館所蔵資料を中心に、浜松市楽器博物館、大阪市音楽団(現・Osaka Shion Wind Orchestra)など諸機関の協力を得て、全世界における古代から現代までの吹奏楽関係の楽器430点、楽譜26点、楽器を持つ人形100点、解説パネル50点、写真パネル52点を展示。吹奏楽の楽器の歴史的変遷、地域的多様性を紹介した。会期中の来館者は約7,300人。24日にはNHKの番組「かんさいニュース1番」で中継放送された。
 
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展示会場入り口
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A.サックス製作オリジナル・サクソフォーン
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トルコの軍楽隊
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陸軍第四師団の使用楽譜
 
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ミニ・コンサート
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アトリウムでの「ちんどん通信社」による宣伝(「関西吹奏楽150年」公演日)

【3月19日】関西吹奏楽150年 (NHK大阪ホール)

前半は幕末から昭和10年代までの歴史的変遷をたどり、後半は関西吹奏楽の現在の姿として様々な編成による演奏で、その幅広い表現力を紹介した。演奏は当公演のために本学学生、卒業生、教員ら82名で編成された創立90周年記念吹奏楽団と本学学生による大阪音楽大学クラリネット・オーケストラ、大阪音楽大学金管バンド。指揮は北野徹、木村寛仁、辻井清幸、本田耕一の各教員、及びロジェ・ブートリー客員教授が行った。輝かしい受賞歴を持つ箕面自由学園高等学校チアリーダー部&吹奏楽部「ゴールデン・ベアーズ」のパフォーマンスが華を添えた。
 
鼓笛隊
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軍楽隊
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昭和初期のジャズ
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チアリーディング&マーチング
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クラリネット・オーケストラ
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ブラス・バンド
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ブートリー教員
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 特別講義

以下の特別講義も「音楽を拡げる」のテーマに沿ったものとして、記念事業の一環として開催された。いずれも一般公開。
 
5月20日
「茶の湯の真髄~一畳半の緊張~」
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音楽以外の芸術文化への理解を深める為に、著名文化人を招き開催している大学院特別講義「芸術文化の諸相」の1回。当年度は武者小路千家家元の千宗守を講師に招いた

 
9月30日
「音と表現」~リズムと動きをとおして~
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新体操の日本代表のチームヘッドコーチなどを務めた山本里佳、音楽監督を務めた古川悦子による特別講義。
音楽の表情を体で表現し、芸術的な世界の拡がりをめざすという内容