エクステンション事業の本格化

1990年代に入り、当時の文部省(現・文部科学省)は高齢化など様々な社会的背景から生涯学習やその一環であるリカレント教育(職業人を中心とした社会人に対して学校教育の修了後、いったん社会に出た後に行われる教育)の必要性が高まったとして、その振興を図るべく、大学などの高等教育機関に積極的な取組みを促した。エクステンション(extension)とは本来、延長・拡大などの意味を持つが、各地の大学でこの言葉を用いた生涯学習の事業が見受けられるようになる。本学もこれまでは入学時より卒業証書授与までが大学教育と捉えていたが、従来就職指導課が行っていた在学生の進路指導に加え、さらにエクステンションという卒業後の活動支援までを大学の責務とし、その為の事業を展開することになった。社会人に対しては、大学開放として公開講座や演奏会などを長年行ってきた実績があるが、卒業生の再教育は新たな分野であった。1998年(平成10年)12月、「エクステンション事業推進委員会」が発足、2000年(平成12年)9月1日の事務機構改革でエクステンション事務部門が誕生したのは既述の通りである(2000年コラム「事務機構改革」参照)。

エクステンション新規事業の第1弾は、事務部門誕生前の2000年6月、在学生対象に実施した「音楽指導グレード取得準備講座」である。これを皮切りに同年12月には主に社会人を対象としたミレニアム特別講座、翌2001年(平成13年)には在学生・卒業生・教職員対象のパソコン講座(資格取得)を開催。在学生から卒業生、社会人に向けた幅広い支援活動を開始した。

同じく2001年2月に音楽系大学として初めて導入したのが、文部省が1997年(平成9年)の教育改革プログラムで各大学に提言していたインターンシップ制度である。就職希望者の増加に伴い、エクステンション・センターが前年より制度の構築、受け入れ先企業の選定などに取組んでいた。学生にはアンケートをはじめ説明会や登録、受け入れ先別面接、オリエンテーションなどを実施。第1期生16名が2月3日から音楽関連産業を中心に、順次6企業・組織で就業体験実習を行った。2001年度からは履修科目として単位を認定。2002年には事業所として本学初のインターンシップ実習生を音楽博物館で受け入れた。

また2001年11月からは卒業生への新しい支援活動として「音楽人材登録事業」を開始。これは演奏者・指導者などの様々な音楽人材の需要先に、登録した本学の卒業生・修了生を紹介するシステムで、全国的にも珍しい取組みとして注目された。人材の紹介先については、1997年より理事会が音楽文化史研究室に音楽市場調査を委託。同研究室が収集する関西洋楽史資料及び関西各地方自治体への照会をもとに、関西の音楽関係団体についてのデータベースを作成、関係機関にアンケートを実施するなどして音楽市場情報の収集・分析を行った。登録については幸楽会と連携して卒業生に呼びかけ、半年で280名が登録、初年度の人材紹介実績は「演奏」が32件58名、「指導」が77件103名、「講師等」が25件35名で、「演奏」はホテルのパーティーや結婚式、小中学校での入学・卒業式、高齢者施設、病院など、「講師等」は学校、自治体、教育機関、警察署などであった。翌2002年度より導入の演奏員もオーディションを経て登録することになる。この事業は2011年度(平成23年度)より株式会社テスタ(2005年設立)に移管された。

あわせてエクステンション・センターは卒業生の支援活動として、広報誌『Muse』を通じ、卒業生、本学の現職・元教員が制作に関わったCD、VTR、書籍、楽譜などの広報・販売促進活動も開始した。