創立80年の実り

1995年(平成7年)は本学にとって創立80周年という記念すべき年であったが、同時に壮絶な大震災に見舞われ、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きるなど、日本中が忘れることのできない特別な年になっていた。震災からいち早く立ち直った本学ではあったが、創立80周年記念公演は、田中理事長いわく「華美なものに流れず、あくまでも着実なものをめざして」行われた。

フェスタ70からの10年間は、オペラハウスという創立者永井幸次が願った一大音楽堂の完成、その専属オーケストラ・合唱団の発足、入試改革、カリキュラム刷新など、さらなる発展を願って急速に変化を遂げた転換期であった。それらによる成果を披露すべく8つの公演を開催した。スタートを切ったのはオペラハウスの開館とともに復活した選抜学生によるオペラで、記念公演として選んだのは、多数の出演者を擁するモーツァルト《魔笛》。総勢35名のダブル・キャスト(うち3名は教員らの助演)、合唱46名、管弦楽団51名、マネージャー・舞台補助・演出補助などの裏方13名が総力を挙げて上演した。

音楽文化史研究室が企画した「永井幸次の軌跡─メモリアル・コンサート」では永井が残した1,000曲余りの作品の中から10数曲を選んで演奏し、西岡信雄音楽研究所所長の解説により、その生涯を振り返った。オペラハウス合唱団が男性は詰襟学生服、女性は紋付に緑袴という大阪音楽学校当時の正装に身を包んで出演。付属音楽幼稚園児たちも遊戯つきの唱歌を披露した。会場のオペラハウスロビーには永井の自筆譜や出版楽譜・教科書などゆかりの品々、写真など300数十点を展示し、“関西音楽界の父”といわれたその足跡を偲んだ。永井は80歳を機に、自伝『来し方八十年』を著したが、本学の80歳を記念してのこの公演は、創立者を顕彰するとともに、本学の来し方80年を回顧するものでもあった。

ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団は第14回定期演奏会に世界的ヴァーグナー歌手として知られるテオ・アダムを迎え、ドレスデン音楽大学のアレクサンダー・フォン・ブリュック教授の指揮の下、ヴァーグナー作品に初挑戦した(大阪文化祭参加公演)。創立記念日となる10月15日にはフェスティバルホールにおいて、第38回定期演奏会を開催。田中邦彦教員による創立80周年記念委嘱作品《“KRISTALLENE STUNDE”祝典的作品「透明な時」》と、大震災への哀悼と新生への決意を込めてベートーヴェン《第九》を演奏した。出演は在学生、教員、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団有志による創立80周年記念管弦楽団(コンサート・マスター:宗倫匡教員)と在学生、卒業生、教職員、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団有志による同合唱団。指揮者には6月のオペラハウス管弦楽団の定期演奏会に続き、再び岩城宏之を迎え、ソリストは本学教員・卒業生が務めた。

記念公演の最後を飾ったのは、創立80周年記念オペラとして近藤圭教員に台本・作曲を委嘱した《出雲の阿国─芸能者の生涯─》。日本オペラ・シリーズⅢとして上演し、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団常任指揮者の飯森範親が就任後初めてオペラ公演のタクトを振った。出演は本学卒業生及び教員で、3役がダブル・キャスト。主役の阿国を演じた一人、川中恵子はオペラハウス合唱団からの抜擢であった。歌舞伎の創始者といわれる出雲の阿国の生涯を描いた有吉佐和子の長編小説を題材に、3時間半に及ぶ大作がオペラハウスの創作オペラ第1号として生み出された(大阪文化祭参加公演)。

本学がオペラを創ったのは、1964年(昭和39年)11月の石川・富山・岐阜演奏旅行の際、狂言『釣針』をもとに文学の教員であった田中理事長が台本を書き、同じく近藤が作曲した《賤のおだまき》以来であった(年表参照)。近藤は本学に勤めて約40年、創立者永井の遺した建学の精神を本学の教師として、作曲家としての努力目標としていたという。その近藤の西洋音楽と日本の伝統音楽が結合したオペラにより、30年前にはなかった自前のオペラハウスで、その専属のオーケストラ・合唱団を得て、本学はまさにその目標とする「新音楽 新歌劇の発生地」たる姿を見せて、創立80周年記念公演の幕を閉じることができたのである。


 

創立80周年記念公演一覧
画像
8公演のプログラムセット
画像
80周年シンボル・マーク
画像


記念ステッカー
画像
 

 
チラシ
 
第7回選抜学生オペラ
《魔笛》
第2回ジュニア・カレッジ・
ソロ・コンサート
永井幸次の軌跡
メモリアル・コンサート
画像 画像 画像
9月20、21日
10月5日
10月7日
 
第6回ザ・カレッジ・コンサート 第7回ザ・コンチェルト・コンサート 大阪音楽大学
第38回定期演奏会
画像 画像 画像
10月11日
10月12日
10月15日
※ソプラノ・ソロは渡邊順子に変更
 
(ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団第14回定期演奏会は1995年ザ・カレッジ・オペラハウス主催公演コラム、《出雲の阿国》は年表に掲載)
 

 
【第7回 選抜学生オペラ《魔笛》】 (9月20、21日)
 

画像
 

画像
 

画像
 
ぱうぜでの打上げ
画像
80周年を祝う花火(ぱうぜ前)
画像
「80TH まてきありがとう」のキャンドル
 

 
【選抜学生たちによる各種コンサート】 (10月5、11、12日)
 
第2回ジュニア・カレッジ・ソロ・コンサート
画像
第6回ザ・カレッジ・コンサート
画像
第7回ザ・コンチェルト・コンサート画像
10月5日
10月11日
10月12日
 

 
【永井幸次の軌跡 メモリアル・コンサート】 (10月7日)
 
オペラハウス合唱団
画像
 
付属音楽幼稚園児
画像
 

永井幸次愛用のオルガンもオペラハウスに持ち込んで、演奏に使用(写真左)
祖父にあたる永井幸次初代学長の
胸像前に立つ永井譲第4代学長
楽譜や教科書などに見入る来場者 本学の来し方も写真パネルで紹介
画像 画像 画像
 

 
【大阪音楽大学 第38回定期演奏会】 (10月15日)

在学生・卒業生・教職員・ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団有志による総勢300名の創立80周年記念合唱団は、6月から練習を重ねた。138名の創立80周年記念管弦楽団とともに、マエストロ岩城宏之の指揮の下、満員のフェスティバルホールで歓喜の歌を響かせた。
 
榎本利彦教員の指導で
合唱練習開始
指揮者岩城宏之による
合唱練習
岩城宏之による
オーケストラ練習
オペラハウスでの
《第九》合同練習
画像
 
画像
 
画像
 
画像
 
ゲネ・プロ 出番前の合唱団教職員 総勢443名の《第九》  
画像 画像 画像 画像
 

 
【日本オペラ・シリーズⅢ 近藤圭《出雲の阿国─芸能者の生涯─》】 (11月3、5日)
 
初の音楽練習 立ち稽古 オケ合わせ プレ・トーク
画像
 
画像
 
画像
 
画像
 
第1幕   第2幕 カーテン・コール
画像
 
画像
 
画像
 
画像
 
近藤圭教員 《出雲の阿国》スコア
画像 画像