日本初劇場付オーケストラの誕生

“自前のオペラハウスに自前のオーケストラ”──本学の歴史にまた一つ、日本初が加わった。劇場専属のオーケストラを発足させたのである。元来、オペラハウスとは、専属のオーケストラ、合唱団、バレエ団、さらに演出、舞台監督、照明、音響、衣裳、大道具、小道具などのスタッフが一体となったものである。オーケストラにとってオペラの演奏は、オーケストラ・ピットにいながら舞台上の劇的状況を正確に把握した上で、柔軟性のある、他の場合と全く違った演奏方法が求められる。自前の劇場で充分なリハーサルができてこそ、より上質な演奏につながる。そしてそれが経験となり、レパートリーとして蓄積されていく。本学はハード面であるオペラハウスの建設開始とともに、演奏というソフト面の充実を図るため、竣工に先立つこと1年前より、人材の確保・育成に着手した。

発足当初は「大阪音楽大学オペラハウス管弦楽団」、のちに「ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団」と称するこのオーケストラは、本学教員及び卒業生57名の登録団員からなる二管編成。楽員長に山名公子、コンサート・ミストレス林泉をはじめ、クラリネットの小川哲生、本田耕一、打楽器の北野徹ら関西楽壇で活躍する顔ぶれが名を連ねた。常任指揮者には、ヨーロッパ各地のオペラハウスで指揮者として経験豊富なフォルカー・レニッケ氏を迎え、1988年(昭和63年)4月17日、F号館合同演習室において結団式を行い、翌日より練習を開始した。

1ヵ月後の5月18日、吹田市文化会館メイシアター中ホールにおいて発足記念演奏会を開催、その産声を上げる。ウェーバー《歌劇オベロン》序曲、平井丈二郎教員をソリストにシューマン《ピアノ協奏曲 イ短調》op.54、ベートーヴェン《交響曲第6番「田園」》の3曲を演奏した。初めてのオペラ演奏となったのは、同年10月7、8日に堺市民会館大ホールで行われた堺市民オペラ協会第3回公演のJ.シュトラウス《こうもり》であった。レナード・アサトンの指揮で全3幕を演奏、本拠地ザ・カレッジ・オペラハウスのこけら落とし公演《ファルスタッフ》への貴重な経験となった。

同団は結成以来、本学主催のオペラや演奏会、学生のための各種演奏をはじめ、その他学外との共催企画や、関西の地域オペラ、文化庁巡回公演など、学内外で幅広い活動を行っている。従来、学生たちによる「大阪音楽大学管弦楽団」が教育的意義と本学の広報目的を兼ねて演奏旅行や出張演奏を行ってきたが、学生たちの負担も少なくなかった。新設のこのオーケストラが各地へ赴き演奏することによって、学生たちが果たしてきた広報的役割を担っていくことになった。

1989年(平成元年)5月25日にオペラハウスで初回を開催した定期演奏会は、2015年10月30、11月1日開催の創立100周年オペラ《ファルスタッフ》で52回を数える。現在、名誉指揮者に飯森範親、山下一史、チャン・ユンスン、正指揮者に大勝秀也、牧村邦彦を擁している。2000年(平成12年)、黛敏郎《金閣寺》公演はじめ本拠地オペラハウスや、東京・滋賀でのオペラ公演、並びに定期演奏会等の成果により、第20回音楽クリティック・クラブ賞を受賞。2008年より公益社団法人日本オーケストラ連盟準会員となっている。

 

 

発足後の初練習(1988年4月18日)
レニッケ氏は3年間常任指揮者を務めた
画像

 
発足記念演奏会出演メンバー(同年5月18日)
画像

 

画像
大学院協奏曲演奏会(同年7月12日)
発足記念演奏会に次ぐ出演となった
画像
堺市民オペラ協会第3回公演《こうもり》チラシ
初のオペラ演奏であった(同年10月7、8日)
画像