ディスカバー・オペラ・シリーズ

“大学ベースのオペラ運動” を標榜した本学は、オペラハウス運営委員会において検討していた学生オペラ以外の残る2つの柱についても、その具体的な公演プランを決定する。それは毎年春と秋に本学教員・卒業生によるシリーズ公演を行うというもので、「春のオペラ」はモーツァルトの5作品による“モーツァルト・オペラ・シリーズ”、「秋のオペラ」は埋もれた名作を取り上げる“ディスカバー・オペラ・シリーズ”。1989年(平成元年)秋、各5年及び4年にわたる長期計画を発表した。

同年11月、先にスタートしたディスカバー・オペラ・シリーズはそのネーミングが表す通り、オペラを“発見”“発掘”していこうというシリーズで、研究的色彩の強い企画として考えられていたものである。オペラ誕生から400年、その間に作られた数え切れない数の作品のうち、日本で上演されるのは、大抵18世紀後半から20世紀初頭にかけて約150年間の特定の作曲家による作品に限定されている。実際にはそれ以外にも素晴らしい作品は数多く存在するが、ただでさえ赤字のオペラ制作を考えると、一般に知られていない作品の上演は、興行的に成り立ちづらい。しかし、あえてこのように商業ベースに乗りにくいために、上演機会に恵まれることなく忘れ去られようとしている作品に光を当て、現代にその楽しさをよみがえらせることは、ザ・カレッジ・オペラハウスの使命の一つではないか──“大学にあるオペラハウス”の意義を追求する中、このシリーズは生まれたのである。大学にしかできない、大学だからこそできる、学術的研究に支えられた実験的な挑戦であった。

ヘンデル《セルセ》、モンテメッツィ《三人の王の恋》、ピッチンニ《ラ・チェッキーナ》、ヘンツェ《若い恋人たちへのエレジー》というバロックから現代まで幅広い時代の作品を取り上げたが、《セルセ》(全幕上演において)、《三人の王の恋》の2作品は本邦初演、《若い恋人たちへのエレジー》は関西初演で、日本人による上演は初めてであった。シリーズを通じて企画者である4名の教員、制作:樋本栄、訳詞:高橋浩子、指揮:松尾昌美、演出:菅沼潤という陣容で行った。

このシリーズの重要なコンセプトは、学術・研究的要素を踏まえながら、歴史上の形式に忠実な再現を目標とするのではなく、当時の人々がオペラを娯楽として楽しんでいたように、現代の日本人が身近に楽しめるように様々な工夫を取り入れ、ザ・カレッジ・オペラハウスのレパートリーにしていくことであった。例えば1作目の《セルセ》では原作が3幕3時間半の上演時間を要するところ、スピーディーな現代人の感覚に合わせるために原作の意図を損なうことなく2時間半に圧縮し、2幕として上演。演出の菅沼はバロック時代の人間喜劇を現代風にアレンジして、その魅力を引き出すことをめざした。本作は1991年(平成3年)に岡田司を指揮に迎え、再演する。

ディスカバー・オペラ・シリーズは1992年(平成4年)で幕を閉じるが、3つの柱の中でも最も大学ベース色の強いこの独創的なシリーズは、その後も“日本オペラ・シリーズ”、“オペラ・シリーズ「世紀末から新世紀へ」”、“20世紀オペラ・シリーズ”へと引き継がれる。その成果は高く評価され、数々の受賞の栄に浴して、日本の音楽界にザ・カレッジ・オペラハウス、そして大阪音楽大学の名を刻んでいくことになる。



 

 
 ディスカバー・オペラ・シリーズ《セルセ》(1989年)
 
立ち稽古
画像
舞台仕込み
画像
カーテンコール
画像

 

 

 
 ディスカバー・オペラ・シリーズⅡ~Ⅳ(1990~1992年)
 
《三人の王の恋》
画像
《ラ・チェッキーナ》
画像
《若い恋人たちへのエレジー》
画像