日本初のオペラハウス開幕

1989年(平成元年)4月20日、ザ・カレッジ・オペラハウスはついにこけら落としの日を迎える。初日は来賓、学内外の関係者を招いた特別招待日で、公演に先立ち開館式典を執り行った。挨拶に立った田中喜一理事長は「商業ベースでもなく、官公庁ベースでもない、大学ベースで、新しい音楽の発信基地として全精力を結集します。オペラハウスを持つ大学としての教育・研究の新たな成果を期すものであります。そのための人材を養成し、より高度な音楽、より秀でた音楽人を世に送り出す。そのことを一大使命と考える次第であります」と述べた。

カーテンが開き、六曲二双の金屏風の前にしつらえた板敷で、茂山千之丞教員らによる狂言式楽《三番三》が演じられた。オペラハウス初の演目である。式典の最後を永井譲学長が、次のような謝辞で締めくくった。「本学は今、オペラハウスという新しい生命の灯をともしました。このホールでいろんな経験を積んだ学生たちが、その灯を分け継ぎ、やがて家に帰り、それぞれの灯を燃やし続けて欲しい。灯を育て、守り続けていくことをお約束して感謝の言葉に代えます」

式典終了後、ヴェルディ《ファルスタッフ》で6日間のこけら落とし公演の幕を開ける。フォルカー・レニッケ指揮のオペラハウス管弦楽団演奏、菅沼潤教員の演出で、1968年(昭和43年=大学院設置)以後の卒業生から選ばれたダブルキャスト20名の出演者が、ヴェルディ唯一の喜劇を演じた。このオペラはヴェルディ最後の作品で、オペラ・ブッファの名作といわれるが、ほぼ全曲が複雑なアンサンブルでできており、数多くの登場人物にいずれも高い演奏能力が求められることから、至難の曲として知られている。本学はこけら落としであえてこの難曲に挑戦し、大学ベースのオペラハウスをアピールした。関西では1956年(昭和31年)の第1回イタリア歌劇団公演以来33年ぶりの上演で、日本人としては関西初演。終幕の森の場面等、オペラハウスならではの奥行きの深い舞台を披露し、舞台機能を存分に発揮できるというのも、この作品を選んだ大きな理由であった。

4日間のオペラ公演のあと、24日昼は49組の学生の中から1次、2次のオーディションで選ばれた学生によるオープニング・コンサート(クラリネット長門由華、ピアノ油井美加子、ソプラノ貞清直美)を開催。同日夜と25日昼は、ヴァイオリン宗倫匡、チェロ河野文昭、ピアノ小森谷泉の3教員によりオペラハウス竣工を記念して結成されたトリオが、三大Bといわれるバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの作品による室内楽演奏会を行った。同日夜に行われた最終公演では、ダン・タイ・ソンがショパンとラフマニノフを弾いて6日間のフィナーレを飾った。

日本初のオペラハウスの開幕には、全国から大きな注目が集まった。公演は入場無料とし、特別招待日の初日を除く5日間は、1人1公演1席のみという条件で申込を受付け、応募者多数の場合は抽選を行った。6日間の来場者数は5,110人。出演者に卒業生、教員、学生、著名音楽家をそろえた公演であったが、このこけら落としはオペラハウスの◆総合芸術たるオペラの本格公演◆学生、教員、卒業生への活躍の場の提供◆世界的演奏家の招聘◆「開かれた大学」の更なる推進──という今後の方向性を示唆したものである。公演はそれぞれ高く評価され、前年の6月から音楽練習、10月下旬から立ち稽古を行い、長い時間をかけてアンサンブルを練り上げた《ファルスタッフ》も期待を裏切らない成果を得ることができた。また、残響可変装置によるホールの音響の素晴らしさは、どのジャンルの演奏会においてもそれを証明した。

こけら落とし後、オペラハウスは田中理事長が述べた「大学ベースの新しい音楽の発信基地」として、人材の育成を図りながらの音楽運動を模索する。それが先の劇場専属のオーケストラの創設であり、本学卒業生の登録出演ソリスト募集、コレペティトールの研修、専属合唱団の創設、演出・舞台監督その他スタッフの養成である。学生たちには演奏の場であるとともに、多くの演奏を聴いて耳を養う機会を与えていく。また、「開かれた大学」として、一般市民にも良質な音楽を低料金で提供し、聴衆を育てるなど、学外の音楽文化向上にも尽くしながら、さらに「新音楽 新歌劇の発生地たらんことを」という建学の精神をめざしていくことになる。

 

 ヴェルディ 《ファルスタッフ》
 

初練習('88年6月19日)
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立ち稽古('89年1月23日)
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オケ合わせ(4月15日)
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ゲネプロ(4月18日)
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ゲネプロに駆け付けたR.リッチ特別招聘教授
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 こけら落とし当日(4月20日)
 
音大通りの横断幕
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狂言式楽《三番三》
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式典で挨拶する田中理事長
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来賓の中には本学の元教員で、1948年(昭和23年)に本学が初めて学校をあげてオペラ公演に参加した 関西音楽研究集団第1回公演《カヴァレリア・ルスティカーナ》を指揮した中川牧三氏の姿もあった。
 

オペラハウス前
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ロビー
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中川牧三氏
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客席
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第1幕
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終幕
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指揮者V.レニッケ氏(21日)
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楽屋
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初日終演後
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ダン・タイ・ソン氏を囲んで
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左より永井譲学長、ダン・タイ・ソン氏
小林峡介・梅本俊和・安則雄馬各教員
(楽屋にて)

 

 

 


 

こけら落としプログラム表紙

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こけら落とし公演チケット

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 各日ともキャンセル券を発行

 

 

上田俊光氏デザインのロゴ

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オペラハウス完成記念ワイン

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