モーツァルト・オペラ・シリーズ

1990年(平成2年)4月26日、ザ・カレッジ・オペラハウス オープン1周年記念公演として、春のオペラ“モーツァルト・オペラ・シリーズ”が幕を開けた。このシリーズはオペラハウスでの演奏に最もふさわしいモーツァルトの作品を5年にわたり、1年に1作ずつ取り上げるもので、全作の演出を栗山昌良氏が務めた。このシリーズを始めるにあたり、演出を誰に依頼するかが一番の難題であった。各方面からの意見をもとに検討した結果、栗山氏の名前が浮上、交渉の末、快諾を得ることができた。同氏との協議により、演目とその公演順、1作目の指揮者に小泉和裕氏を招聘、4日間の公演は日本語・原語の交互に行う、5回分のプログラムは同一企画でまとめ、一つの読み物になるような学究的なものにする等が決定していった。

外国作品のオペラにおける上演言語については古くから議論のあるところだが、当時は原語上演が主流となり、字幕スーパーを用いての公演も多くなっていた頃であった。本学はあえて性急に結論を出さず、それぞれの効果を見比べたいと、日本語・原語の併演を試みた。これは栗山氏の「母国語による芸術性豊かな音楽表現があってこそ、原語表現もその意義を確実なものとし得る」との主張に基づくものであった。この考えは、自ら日本語訳を施して関西歌劇団の上演を行った、故朝比奈隆名誉教授のそれと共通するところがある。この二ヵ国語による上演もまた大学ベースならではの実験的なもので、大いに注目を集めた。

シリーズ第1作は《フィガロの結婚》。オペラハウス独自の最高水準の公演を求めて、以下の方針を打ち出した。
 ・ノー・カット版で、従来の公演では削除されていた難しいアリアも取り上げたい。
 ・ザ・カレッジ・オペラハウスならではの、モーツァルトらしい響きを実現するため合唱を小編成(24名)のものとし、管弦楽についても同様の配慮を行う。
 ・キャストはザ・カレッジ・オペラハウスの明日を託して、本学出身の中堅、若手の歌手を登用。
 ・演出方法としては、1~2幕通し、3~4幕通しで、スピーディーな展開を図る。舞台機構・機能を活用し、ノー・カット版による上演時間の伸びを圧縮する。
 ・原語上演の際、聴衆の音楽への集中を妨げないため、字幕スーパーは使用しない。

序曲が終わり、幕が上がると舞台全面に縦長の白い紗幕──中央に描かれたモーツァルトの横顔のシルエットの上に、モーツァルト・オペラ・シリーズの5作品名が記され『Le Nozze di Figaro 1786』にライトが当たる。この演出は、各回の上演作品にライトを当てながら、シリーズを通じて踏襲された。舞台は客席壁面と同色のバルコニー付きアーチで仕切られ、上部中央にオペラ名。その枠内で4幕を展開するという趣向で、これも全作に用いられたスタイルであった。「オペラハウスならではのモーツァルト・オペラを“原点に返って、商業的粉飾を排し、しかも楽しい”ものにしたい」と長期にわたる演出への意気込みを語った栗山氏の創意が凝らされた。

シリーズ最終回となった1994年(平成6年)の《魔笛》は6日間公演し、オペラハウス2階ロビーでは過去の衣裳展も行った。初日のプレ・トークに出席した栗山氏は、「5年前、このオペラハウスに来て『ここでモーツァルトがやれる』と感銘した。全国でここ程オペラに適したホールはない。この5年間、大阪音楽大学卒業の方々と付き合え、本当に幸せでした。表現意欲にあふれる人たちの、その心に私のひと言が響いて、輝きを見せる。それが芸術というものでしょう」とシリーズを振り返った。また後日、制作担当であった安則雄馬教員は、「5年間を終え、何よりもまず一つの目標に向かって先輩、後輩が競い合い、協力しながら“自前の劇場”で練習できたことが、何よりの喜びであった。キャスト、スタッフ各人がそれぞれに素晴らしい成果を上げてくれたが、さらに“栗山教室”で学んだ多くの財産を、後輩に伝え、大阪音大オペラの伝統を作り上げて欲しいと念じている」と本学広報誌に記している。(1994年5・6月号)

このシリーズはレパートリー化という当初の計画通り、《フィガロの結婚》《コジ・ファン・トゥッテ》が再演され、舞台装置、衣裳などは学生オペラにも使用された。

 

 モーツァルト・オペラ・シリーズ開幕まで
 
【キャスト】
初顔合わせ
画像

 
音楽練習
画像

 
栗山氏の演出プラン説明
画像

 
オペラハウスでの稽古
画像
立ち稽古
画像
ゲネプロ
画像
 

 
【ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団】
画像 画像 画像
 

 
【練習の表情】
演出の栗山氏
画像
キャスト
画像
オーケストラ
画像
 

 
【舞台作りの様々】
5作を通じて使用されたモーツァルトアーチを製作
画像

 
画像

 
画像

 
画像

 
小道具
画像
照明
画像
衣裳
画像
かつら
画像
 

 
公演本番
画像 画像 画像
 

 
【舞台裏の表情】
画像 画像 画像

 

 

 モーツァルト・オペラ・シリーズ(1990~1994年)
 
全作演出は栗山昌良
公演日 作品 指揮
 1990年4月26~29日   フィガロの結婚 小泉和裕
 1991年4月26~29日   コジ・ファン・トゥッテ 松尾葉子
 1991年5月10、12日   フィガロの結婚 小泉和裕
 1992年4月26~29日   ドン・ジョヴァンニ 星出豊
 1993年4月26~29日   後宮からの逃走 小泉和裕
 1993年5月28、30日   コジ・ファン・トゥッテ 松尾葉子
 1994年4月26~29日 
 1994年5月 7、8日 
 魔笛 小泉和裕
 

 
画像
 

シリーズ全5作品の演出に当たった
栗山昌良氏
小泉和裕氏
画像
松尾葉子氏
画像
星出豊氏
画像