カリキュラムの改革──「基礎の確立」「個の充実」

1973年(昭和48年)の学長選挙で三選された水川は、2年後の1975年(昭和50年)、学長就任から10年、創立60周年という区切りの年を迎え、本学の将来を鑑み一大決心をする。必要な諸改革断行のために、一旦学長を辞し、信を問うた上で実施したいと教授会に申し入れ、教授会は5月、信任を決議して同学長の任期を改めて1979年(昭和54年)6月末日までの4年とした。これを受けて水川は次年度初回の教授会で、今後の大学教育の基本方針について大きく2つのことを提案する。一つは個別指導の徹底化、そしてもう一つはカリキュラムの多様化によって学生の個性を伸ばすことのできる条件を確立すること。水川自身が教育内容に直接言及するのは学長就任以来、初めてのことで、本学の後退なき発展のためには新機軸が必要であると痛感しての提案であった。これらは全員異議なく承認された。新カリキュラム委員会が組織され、昭和53年度実施をめどに始動する。「基礎の確立」「個の充実」という指標を掲げ、新たな一歩を歩み出すこととなったのである。

検討を重ね、本学の教育目標の3つの柱、すなわち音楽家養成、音楽指導者養成、教養人養成に則って、選択科目の拡充、英才を育てるための科目の開設を決定する。具体的には、教職の選択科目増や「専門特殊研究」の新設などである。この「専門特殊研究」とは、優れた才能を持つ学生により専門的な教育を提供することで、その能力を最大限に伸ばすことを目的としたもので、各専攻によりそれぞれ独自の内容を持っていた。ピアノ専攻はオーディションで選んだ学生に3年次から2年間、特別授業を受けさせ、年に2回の公開演奏会出演、特別外来講師のレッスン受講を課した。声楽専攻は同じく20名ほどの学生を選び、3年次に四半期ずつの歌曲(独・仏・伊)、オペラの4クラスに分かれてグループ・レッスンを行い、ピアノ専攻の「伴奏理論」での歌唱実践と受講も必修とした。4年次はオーディションで学生をさらに半数に絞って、オペラか歌曲のコースを受講させるというものであった。管弦打専攻については、弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器別に「室内楽」の講座を設けて受講させるとした。

この他にも旧科目の内容を発展させたり、より専門性の高い科目の新規開設や演習科目の細分化などにより、選択科目は2倍近くに増えた。他方、専門教育だけではなく、一般教育、基礎教育の徹底も加えて行った。1978年(昭和53年)4月、いよいよ新カリキュラムがスタートした。





ロドルフォ・リッチ氏による声楽特殊研究のレッスン風景(1986年4月)

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大学3年 ピアノ特殊研究演奏会(1985年10月11日)

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大学4年 声楽特殊研究生による「リート・オペラ発表会」(1991年12月20日)

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