関西における「地域オペラ」の誕生

1949年(昭和24年)に関西オペラ協会(現・関西歌劇団)が発足。そして1964年(昭和39年)に二期会関西支部(現・関西二期会)が設立された。この両団体による大阪市域を中心とした弛まぬ積極的な活動や、本学を含む音楽系大学で声楽を専攻する学生の増加に伴い、戦後から高度経済成長期にかけて関西のオペラ界は大きな躍進を遂げたといっても過言ではない。特に関西歌劇団は既存のオペラ作品の上演に加え、数々の創作オペラを世に送り出すことにより全国的な注目を集めるに至った。また、関西二期会は新人歌手の育成といった人材養成の面でも多大な貢献を果たしてゆく。こうした両団体による地道なオペラの啓蒙活動や実践の場を広く求める若き声楽家たちの台頭、そして海外のオペラ・ハウスの相次ぐ来演の影響等もあり、1970年代から大阪市域外で新たなオペラ運動の気運が徐々に高まりを見せはじめたのは、ごく自然な成り行きであったと言えるだろう。

1972年(昭和47年)に結成された京都オペラ・グループや、1973年(昭和48年)に発足した創作オペラの会「葦」といった新規団体に加え、1975年(昭和50年)には和歌山オペラ協会、1978年(昭和53年)には堺市民オペラ(現・堺シティオペラ)といった、いわゆる「地域オペラ」が誕生(全国的には大分県県民オペラ協会[1967]、藤沢市民オペラ[1973]等が先行)。1986年(昭和61年)に発足した作曲家・尾上和彦の創作を主に発信する声藝舎といったオペラ集団の他、関西圏では1980年代に入って「地域オペラ」の設立が一挙に拡大してゆく。

1980 神戸オペラ協会(後のニュー・オペラシアター神戸)
1981 明石オペラ協会
1981 ALA DI KOBE
1981 奈良オペラ研究会
1983 滋賀オペラ協会
1985 伊丹市民オペラ
1989 加古川市民オペラグループ(現・加古川シティオペラ)


これらのオペラ協会や団体は、地方自治体の関与、市民参加型、オーディション・システム、といったそれぞれに個別の要素を有しながらも、主な共通点として音楽専門教育を受けた地元声楽家たちが中核となりオペラの制作を担ったのが大きな特徴であった。その幾つかは地元の題材に基づく創作オペラを手掛け、正に地元に密着したオペラ活動を展開(滋賀オペラ協会:野々垣恵信《余呉の天人》[1983]、堺シティオペラ
大野正雄《晶子》[1986]、明石オペラ協会鈴木英明《イワイさまおじゃったか》[1989]等)。また、ニュー・オペラシアター神戸が行った海外公演や、堺シティオペラにおける海外のオペラ・ハウスとの提携公演等、国外を視野に入れた活動も特筆に値しよう。経費のかさむオペラ制作だけにすでに活動停止を余儀なくされた団体もあるが、1991年(平成3年)の川西市民オペラ(現・みつなかオペラ)、1992年(平成4年)の河内長野マイタウンオペラ、1995年(平成7年)の和歌山ふるさとオペラ(現・和歌山市民オペラ)、1998年(平成10年)の橋本市創作ふるさとオペラ(現・はしもとしふるさとオペラ)、2002年(平成14年)の芦屋市民オペラ、といった「地域オペラ」が1990年代以降も着実に産声を上げ意欲的な活動を行っている。

1982年(昭和57年)、尼崎市総合文化センター大ホール(現・あましんアルカイックホール)が開館。関西二期会や関西歌劇団等と共催してオペラ事業を展開してゆく。そして1989年(平成元年)に本学のザ・カレッジ・オペラハウスが開館し、オペラ上演を開始した。更に、いずみホール(1990年開館)、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(1998年開館)、兵庫県立芸術文化センター(2005年開館)といった新設の音楽ホールや文化施設が独自のオペラ制作に取組み、平成以降の関西のオペラ界は多様性を増してゆく。