関西におけるベートーヴェン生誕200年

日本万国博覧会の開催された1970(昭和45年)は、日本中がベートーヴェンに沸いた年でもあった。読売新聞社主催による42回にわたって140曲の作品を取り上げる連続演奏会を筆頭に、東芝EMIや日本グラモフォンによるベートーヴェン全集の出版、NHK-FMによるベートーヴェン・チクルスの放送と、大型企画が目白押しであった。

関西楽壇も大いに盛り上がった。前夜祭として大阪国際フェスティバル協会が大阪市立博物館と共同で1967年(昭和42年)にベートーヴェン展を開催。楽譜、手稿、ピアノ、遺品といった縁の品々を海外から集めた大規模な展示は、大きな話題を呼んだ。また、1969(昭和44年)年8月から翌年7月にかけて、大阪労音が巌本真理弦楽四重奏団による弦楽四重奏曲の全曲演奏会を開催。京都十字屋も1970年に岩渕竜太郎弦楽四重奏団によるベートーヴェン生誕200年記念コンサートを企画して、全6回にわたる弦楽四重奏曲全曲連続演奏会を行った。

他方、大阪駅前第1ビル10階のモーツァルトサロンは、3月から12月にかけて、関西在住10人のピアニストによるピアノ・ソナタ全32曲連続演奏会を行った。命日の3月26日に始まり、誕生日の12月17日に終わるという趣向を凝らした企画である。なお、来日したヴィルヘルム・ケンプもピアノ・ソナタ及びピアノ協奏曲の連続演奏会を開催した。また、声楽曲の演奏会やオペラ上演の試みも行われ、アサヒコーラスは《ハ長調ミサ》に挑み、東京・大阪・神戸・名古屋労音の共同企画によるオペラ《フィデリオ》が上演された。

大阪フィルハーモニー交響楽団は万博で忙しくなるのを避けて、前年の1969年に前倒しでベートーヴェン・チクルスと銘打った演奏会を行った。さらには大阪国際フェスティバル協会も12月17日のベートーヴェン200回目の誕生日に「生誕の日を祝う会」を開催し、属啓成による講演や、《ピアノ・ソナタ第14番「月光」》、《弦楽四重奏曲第16番》、《交響曲第5番「運命」》等の演奏、参加者全員による《歓喜の歌》(《交響曲第9番》より)の合唱が行われた。その他、FM大阪では12月をベートーヴェン月間として土曜深夜の時間帯をベートーヴェンの作品で構成し、最後の土曜日である26日には《交響曲第9番》が放送された。

 

 


1967年(昭和42年)ベートーヴェン展(大阪市立博物館)

《第九》の自筆楽譜や、のちに本学楽器博物館が購入した1816年ブロードウッド社製のピアノも展示されていた
ベートーヴェンが晩年に愛用していたものと同型のピアノで、演奏可能な状態で残る唯一のものとして、会場で生演奏もされていた

チラシ*
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図録に掲載のブロードウッド社製ピアノ
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生誕200年記念と銘打った演奏会が数多く行われた
この年、大阪フィルハーモニー交響楽団は《第九》の15回を筆頭に、ベートーヴェンの作品を81回演奏したという

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1970年6月、大阪国際フェスティバル協会は記念出版も行った

出版チラシ*
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1970年12月17日 生誕を祝う会(フェスティバルホール)

チラシ*
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プログラム*
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《ピアノ・ソナタ第14番「月光」》を弾く小林道夫
ブロードウッド社製のピアノは本学楽器博物館が貸し出した


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*(公財)朝日新聞文化財団提供