広告は世相を映す(2) 入場券

コンサートに出かける際にインターネットを通じて入場券を手に入れることは今やまったく当たり前のようになってしまっているが、インターネットの普及は21世紀の出来事であり、チケットぴあが誕生したのは1984年(昭和59年)であった。それ以前の人々はどのようにしてチケットを入手したのだろうか?時代を生きた老音楽愛好家に尋ねるのも一つの方法だが、時代を生き延びた案内チラシもまた当時の状況を昨日のことのように伝えてくれる。

画像は京都会館第1ホールで行われたシュヴァルツコップ関西初公演の入場券販売に関する案内チラシである。手に取り、真っ先に目に飛び込んでくるのが、「世界の至宝=現代最高の名歌手! エリザベート シュワルツコップ 7月24日前売開始 予約受付け致します」という言葉である。前売と予約が行われていたことがわかる。そして、チラシの解説を引くならば「入場券は市内主要プレイガイドにて、7月24日より前売を開始します」という次第であり、京都市内でチケットが直接売られていたことが判明する。

他方予約は、「音楽愛好家の皆様のご便宜をはかるため、予約を承りますので申込書にご記入のうえ、おはやめにお申込み下さい」という具合であった。郵便で申込書を送付するシステムであり、入手は「早い者勝ち」である。そして予約のお金とチケットの受け渡しはというと「ご送金の場合は、郵便事故防止のため書留にてお願い致します。なお返信料(切手で可)同封頂ければ、券をお送り致します」という具合であった。現金書留でお金を送るとチケットが返送される方式である。

「直接予約お申込みに来ていただいた場合は8月15日までは、A券(2,500円)B券(2,000円)をそれぞれ5%割引致します。なおC券(1,500円)D券(1,000円)は、枚数僅少のため予約受付できませんのでご諒承下さい」という記述もあり、割引販売が行われ、安価なチケットは通信販売で入手できないという状況も判明する。その他、分割払いも受け付けていて、良席が一般庶民にも開かれていた。

銀行のオンラインシステムが全国を結び始めたのがちょうどこの頃からであった。郵便によって情報とお金が行き来する世界、町の演奏会が町の人々によって消費される世界が見えてくる。





エリーザベト・シュヴァルツコップ関西初公演 入場券販売案内チラシ
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