口語童謡の先駆者──東くめ

「♪もう、いくつ寝ると、お正月~」。

普段何気なく歌われている歌であるが、実はこの歌は日本近代音楽史上において画期的な歌であり、最初期の口語童謡でもある。作曲家は滝廉太郎。作詞家は東(ひがし)くめ。東は『朝日新聞』のインタビューで、簡単な童謡が保育の現場で求められることを知り、試しに創ってみたところ大歓迎されて大いに広まったと、作られた当時の状況を述べている。

東は関西に縁(ゆかり)が深い。和歌山県新宮市に生まれ、ウヰルミナ女学校(現・大阪女学院)で学び、東京音楽学校(現・東京藝術大学)に進学した。同期卒業生に安藤幸と永井幸次がいる。卒業後程なく教員の東新吉と結婚。めまぐるしい転勤生活を送ったあと、大阪府池田市に落ち着く。家族と暮らし、ピアノの先生として人生を送った。池田市、新宮市等に彼女が作詞した《鳩ぽっぽ》の歌碑がある。(一般に広く知られている、「♪ぽっぽっぽ」から始まる《鳩ぽっぽ》は『文部省唱歌』の《鳩》であり、別曲である。)