世紀の歌手たちとの共演

1959年(昭和34年)、3年ぶりにイタリア歌劇団の第2回公演が行われ、主催者であるNHKの要請により、本学学生が時代を代表するような世界の名歌手たちと同じ舞台に立つという、大変貴重な機会に恵まれた。この時の公演で話題をさらったのは何と言っても当時“黄金のトランペット”と謳われたテノールのマリオ・デル・モナコであった。そのモナコが出演した《オテロ》に52名、モナコとジュリエッタ・シミオナートが共演した《カルメン》に35名、そして円熟のフェルッチョ・タリアヴィーニが主演の《ボエーム》に22名と、3つの演目でのべ109名の学生が出演を果たした。

出演を果たしたといっても歌ったわけではない。舞台上を素通りしたりする、いわゆるエキストラの一員として参加したのである。しかし、ほんの数分とはいえ、世界一流の歌手たちと同じ舞台に立ち、その芸術に間近にふれることができたことは、学生たちにこの上ない刺激と目標を与えた。それは演奏そのものだけでなく、プロの演奏家としての心構えでもあったようで、のちに本学教員となる窪田譲は、ホテルのロビーで窓際に座ってサインをしていたモナコが、「ここは寒い」と言って反対に向いて座り直したのを見て、些細なことにも敏感に気を遣うその摂生ぶりに、自分の不注意をとがめられたように思えたと語っている。

また他の学生は、楽屋でのイタリア人歌手たちの様子を見て、オペラはイタリア人の心に流れる気質そのものだとし、日本人ももっと日本的な個性のある芸術を深く研究し、国際的なものにまで発展させて、世界の共有物にするべきであり、そんな日が一日でも早く来るように努力したいとこの時の感想を述べている。




NHKからの賛助出演依頼を伝える記事(昭和34年1月20日 『関西芸術』第80号)

新聞記事




第2回イタリア歌劇団公演プログラムより

プログラム画像




3月2日 ヴェルディ《オテロ》キャスト・スタッフ(以下、同上プログラムより)

キャスト一覧
※画像をクリックすると拡大します




3月3日 プッチーニ《ボエーム》キャスト・スタッフ

キャスト一覧
※画像をクリックすると拡大します




3月5日 ビゼー《カルメン》キャスト・スタッフ

キャスト一覧
※画像をクリックすると拡大します