『来し方八十年』

この年80歳になった永井学長は、本学創立40周年を記念して、以前から勧められていた自伝の出版を行った。鳥取の士族の家に生まれ、伯父が従兄妹たちに子守唄代わりに歌っていた讃美歌を聞いて初めて西洋音楽と出会ってから、本学を創立して80歳に至るまでの自分の来し方を著すことで、いくらかでも後進の参考になればとの思いからであった。

三人称で書かれた誰かの自叙伝を読んだことがあったらしく、他人が評しているように巧妙だったとして、永井もそれを真似て自分のことを“彼”と称して書き綴っている。

あとがきには「今日、人は私を成功者の一人と称賛してくれても、まだ私の理想の一端しか実現できておらず、今後も余命に鞭打って励みたいと思っている」と記しているが、自筆原稿の中でこの刊行された自著に含まれなかった部分に「将来の希望」として、その余命に鞭打っても実現したいと思うことが列挙されている。そしてこれらの希望はその多くが、将来実現されていくことになるのである。

(一)四年制の大学を設立すること
(二)大学の教授陣を固むること
(三)大学卒業生にして将来有望な者を選択して海外に留学させること
(四)本大学に附属として次の四つを設く
   高等学校(現在の高等学校を改称) 中学校 小学校 幼稚園
(五)作曲科教科の充実
(六)外国語を強化し、学生が原書で研究する実力を養成したい
(七)本学に次の建物を建設すること
   図書館 教師館(外人用の洋館・邦人用の日本家屋)寄宿寮 購買館 出版部 音楽博物館
(八)邦楽研究部の設置
(九)奨励資金の創設



永井学長自筆原稿
前書きの部分

永井学長直筆原稿



本学創立についての部分より

永井学長直筆原稿